東京地裁(平成29年7月27日)“ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体事件”は、「被告らは、オキサロール軟膏には複数の競合品(ボンアルファ、ボンアルファハイ、ドボネックス)があるところ、被告製品は、その性能が上記各競合品と同等であることに加え、安価であるため、原告製品だけでなく、上記各競合品のシェアをも奪ったものであるとし、上記各競合品は、乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤の市場において42%のシェアを有しているから、42%分について推定を覆滅すべきである、と主張する。確かに、証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、@乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤としては、有効成分がタカルシトールのボンアルファ及びボンアルファハイ、有効成分がカルシポトリオールのドボネックス、有効成分がマキサカルシトールのオキサロ ール軟膏及び被告製品があり、これらはいずれも薬効や作用機序の面でほぼ同等と解されており、医師も、これらを適宜選択して処方していること、A被告製品は後発医薬品であり、オキサロール軟膏や他の外用ビタミンD3製剤に比較して価格が安いこと、B医師は、患者に薬剤を処方する際には、患者の薬剤費負担も考慮していること、C被告製品が平成24年12月に販売開始された後、オキサロール軟膏だけでなく、他の外用ビタミンD3製剤の売上高も減少したこと、Dボンアルファ、ボンアルファハイ及びドボネック スは、平成24年から平成26年にかけて、その販売高において外用ビタミ ンD3製剤の市場の合計41〜42%程度のシェアを有していたことが認められる。以上によれば、ボンアルファ、ボンアルファハイ及びドボネックスは、いずれもオキサロール軟膏の競合品であって、被告製品は、オキサロール軟膏だけでなく、上記各競合品のシェアをも一定程度奪っていたものと認められ る。なお、原告は、ボンアルファ軟膏は低濃度の軽症患者向けであり、またボンアルファハイ軟膏は1日1回の塗布で済み、他の薬剤では代替できないため、これらはオキサロール軟膏の競合品ではないとも主張する。しかし、原告の上記主張は、上記各軟膏の薬効が他の軟膏と本質的に異なる旨主張するものではなく、あくまでもその濃度等の違いによって使用方法に差が生じる旨主張するものにすぎず、前記のとおり、ボンアルファやボンアルファハイもオキサロール軟膏の競合品であると認められることを左右しない。他方で、証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、オキサロール軟膏や被告製品、上記各競合品は、いずれも医師の処方箋を必要とする薬品であり、消費者(患者)が自由に選択できるものではないこと、被告製品は、オキサロール軟膏の後発医薬品であって、有効成分も同じであり、医師がオキサロール軟膏を処方した場合、処方箋の変更なしに患者が自由に購入できるのは被告製品だけであることが認められる。そうすると、オキサロール軟膏から被告製品に変更する場合と比較すると、上記各競合品から被告製品に変更するのは容易ではないというべきであって、上記各競合品(ボンアルファ、ボンアルファハイ、ドボネックス)が、乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤の市場で42%程度のシェアを有していたとしても、被告製品が同シェアをそのまま代替したものとは到底認め られない。以上の諸事情を総合的に考慮すると、被告製品は、上記各競合品のシェア を一定程度奪ったものとして、特許法102条1項本文による推定が覆滅される割合を10%と認定するのが相当である」と述べている。 |