東京地裁(平成29年7月27日)“ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体事件”は、「原告は、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度によって、被告製品が薬価収載されるまでは、現に原告製品について薬価の維持という利益を得ていたところ、後発品である被告製品が薬価収載されたことにより、平成26年4月1日に原告製品の薬価が下落したものである。この薬価の下落は被告製品の薬価収載の結果であり、本件特許権の侵害品に当たる被告製品が薬価収載されなければ、原告製品の薬価は下落しなかったものと認められるから、被告らは、被告製品の薬価収載によって原告製品の薬価下落を招いたことによる損害について賠償責任を負うべきである」、「医療機関等からの請求額には薬価の規制があるため、医薬品メーカーや販売代理店が販売する医薬品の価格は、事実上、薬価を基準に定められることからすれば、被告製品の薬価収載によって、原告製品の薬価が下落し、それに伴って原告・マルホ間の原告製品の取引価格が下落したものと認められる。原告・マルホ間の契約を見ても、●(省略)●が規定されており、この内容は経済合理的なものというべきところ、これによれば、原告製品の薬価が下落すれば、それに伴って原告・マルホ間の原告製品の取引価格も下落することが当然に予想されるものである。現に、・・・・原告・マルホ間での原告製品の取引価格の下落率は、薬価の下落率とほぼ同一である。以上によれば、原告・マルホ間の取引価格の下落分は、その全てが被告製品の薬価収載と相当因果関係のある損害と認められる」、「なお、・・・・市場シェア喪失による逸失利益は、被告らの特許権侵害行為によって原告が販売できなかったオキサロール軟膏に関する逸失利益であるのに対し、上記で認定した取引価格下落による逸失利益は、価格下落期間中に原告が実際に販売した原告製品の販売数量に対応する逸失利益であって、両者は別個の損害であるから、原告は、被告らに対し、両方の損害について賠償を請求できる」と述べている。 |