東京地裁(平成29年7月27日)“ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体事件”は、「被告らは、いずれも医薬品の製造販売等を業としているのであるから、その販売する医薬品の特許権侵害については高度の注意義務を負うというべきところ、被告製品の販売前に、本件特許の内容や本件製造方法が本件特許権を侵害する可能性について慎重に検討したならば、本件製造方法が本件発明の構成と均等であると判断される可能性について十分認識可能であったものと認められる。この点に関し、『A弁護士の見解に対するセルビオス社の見解』と題する平成24年11月7日付けのヨーロッパ特許弁護士作成の書面・・・・、『A弁護士の見解についての検討』と題する平成24年11月22日付けのB弁理士作成の書面・・・・は、いずれも、本件製造方法による本件特許権の均等侵害の可能性について検討してはいるが、前者・・・・は、均等論に関して『公知の事項については請求項の範囲に拡大されない』などとした上で、本件製造方法は優先日において既に公知の方法であった上、本件製造方法は本件発明記載の方法とは効果が異なるなどとするにすぎず、後者・・・・も、製造方法の特許発明では、原材料は必須の構成部分であるところ、原材料がシス体とトランス体とで異なる点は本質的部分の相違であり、また、トランス(5E)セコステロイドは、特許請求の範囲から意識的に除外されたなどとするにすぎず、結局、いずれも比較的簡単に均等侵害にはならないと結論付けており、慎重な検討結果であるとはいえない。したがって、被告らが、このようなヨーロッパ特許弁護士や弁理士の見解を信用したとしても、これによって直ちに過失がなかったとはいえない」と述べている。 |