知財高裁(平成9年91日)“生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置事件控訴人らは、本件発明が本件装置の販売に寄与する割合につき0%を超えない旨主張する。しかし、本件発明は、共回り現象の発生を回避してクリアランスの目詰まりをなくし、効率的・連続的な異物分離を実現するものであって、生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものといってよい。すなわち、控訴人ら指摘のとおり、選別ケーシング(固定リング)と回転円板との間に設けられたクリアランスに生海苔混合液を通過させることによりクリアランスを通過できない異物を分離除去する装置が従来用いられていたとしても、従来の装置は本件発明が解決課題とする問題点を抱えていることは明らかであり、この点は需要者の購買行動に強い影響を及ぼすものと推察される。このことと、従来の装置の現在における販売実績等の具体的な主張立証もないことを考えると、本件発明の実施は生海苔異物除去装置の需要者に対し、強い訴求力を有するものであることがうかがわれる。他方、控訴人らは、本件発明が本件装置に寄与する割合を減ずべきであるとする根拠として、生海苔異物除去機において最も重要な点は異物除去の精度(性能)であるのに対し、本件発明は、異物除去の効率に関する発明であるなどの点を指摘するけれども、生海苔異物除去機による異物除去の効率も装置購入の動機として重要な要素であることは明らかである。また『共回り』が発生し得る期間が海苔の収穫期全体から見て一時期にとどまるとしても、時期に応じて回転円板を交換する煩雑さ等を考慮すると『共回り』防止の必要性が購入動機に占める重要性が減ずるとも思われない。さらに、クリアランスを海苔が通過できないことの解決方法としてクリアランスの幅を広げるように調整した場合、確かに海苔はクリアランスを通過し得ることとなろうが、異物の通過も一定程度阻止し得ず、異物除去という観点からは本末転倒な事態ともなりかねない。そうすると、控訴人らが本件発明の寄与する割合を減ずべきとする根拠は、十分な合理性を持つものとはいいがたい」、「以上より、本件発明が本件装置の販売に寄与する割合を減ずることは相当でない。この点に関する控訴人らの主張は採用し得ない」と述べている。

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