知財高裁(平成9年97日)“河川の上流部及び中流部における護岸の方法事件特許法6条6項2号は、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとの要件(明確性要件)に適合するものでなければならないと規定するところ、その趣旨は、特許請求の範囲の記載が特許権の権利範囲を確定するものであることからすると、仮に特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、権利の及ぶ範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような事態を防止しようとするものである。そして、特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載に加え、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、出願当時における当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。より具体的に言えば、請求項の記載がそれ自体で明確であると認められる場合には、明細書又は図面中に請求項の用語についての定義又は説明があるかどうかを検討し、その定義又は説明によって、かえって請求項の記載が不明確にならないかを判断し、他方、請求項の記載がそれ自体で明確でない場合は、明細書又は図面中に請求項の用語についての定義又は説明があるかどうかを検討し、その定義又は説明を出願時の技術常識をもって考慮して請求項中の用語を解釈することによって、請求項の記載が明確といえるかどうかを判断し、以上の結果、請求項の記載から特許を受けようとする発明が明確に把握できるか否かによって判断するのが相当である」と述べている。

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