知財高裁(平成9年98日)“電流循環装置事件本願発明の課題は、原告の主張によると、課題@『車のボディの汚れが取れ易くなり、0日置きのカーシャンプーではカーシャンプーの頻度が多過ぎて今までの通常の輝きが0なら今回の発明を搭載した後は輝きは8ぐらいになること、つまり『車を磨く頻度を減らし、少しの力で磨けること、及び、課題A『間接的に燃費の向上に貢献すること』である」、「本願明細書0008には、本願発明を実施することにより、課題@が解決されたことが(ア『車のボディとあらゆる部品等が従来より汚れにくくなっていた。また、汚れていても、こびりつき方が弱く、汚れが取れ易くなっていた。従来は0日置きのカーシャンプーでやや満足というか、もうちょっと頻度を上げたほうがいいかなという感じだったが、ソーラーパネルを搭載した時点から、0日置きのカーシャンプーでは、もはやカーシャンプーの頻度が多過ぎで異常に車のボディがピカピカになった。』、(イ0日置きのカーシャンプーでは、もはやカーシャンプーの頻度が多過ぎで異常に車がピカピカになり、今までの通常の輝きがとでも例えるなら今回の発明を搭載した後は輝きは8ぐらいになる。ところで、この異常にピカピカなボディはいままでのメンテナンスとカー・ケアでは起こったことが無いし、こんなに輝いている自動車を一般公道上で見た記憶は発明者にもまた発明者を取り巻く人々にも、光に対し反射性の強い塗装を二重塗装した場合の車以外に、見たことがなかった』と記載されている。上(アについては、汚れにくくなったり、汚れが取れやすくなったと判断した根拠は、カーシャンプーの頻度が、従来は0日おきでやや満足であったのに対し、本願発明を実施した後は0日おきでは頻度が多過ぎることである旨記載されているが、自動車の汚れは、自動車の周囲の環境や走行距離等によって異なってくるから、それらについて何らの記載がない以上、適切に比較ができているとは認め難い。したがって『汚れにくくなっていた』こと及び『汚れが取れ易くなっていた』ことについての客観的な裏付けがあるということはできない。上(イについては、車の輝きが、本願発明を実施しない従来の場合には0で本願発明を実施した場合は8ぐらいである旨記載されているが、上記の0や8が輝きのどのような指標であるのか明らかでない上、仮に輝きに差があるように見えたとしても、発明者が、本願発明を実施しなかった従来の場合の車を見た過去の記憶と、本願発明を実施した場合の車を見た記憶とを比較しているにすぎないから、比較の条件が適切に設定されているといえず、客観性に欠けるものである。また『発明者を取り巻く人々』が、こんなに輝いている自動車を見たことがなかったとの記載に関しても、具体的に第三者がどのように車の輝きを評価したのか記載されていないから、やはり客観性に欠けるものである。したがって0008の記載から、本願発明によって課題@が解決されたものと当業者が理解できるとはいえない」、「そして、他に、本願明細書には、本願発明によって課題@が解決されたものと当業者が理解できる記載があるとは認められず、また、そのような技術常識があるとも認められない」、「以上のとおり、当業者は、本願発明によって、課題@が解決されることを理解することができず、そうすると、電気防食現象により自動車が汚れ難く、電気抵抗になるものが少なくなることによって課題Aが解決されると理解することができるともいえないから、本願発明の特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するということはできない」と述べている。

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