大阪地裁(平成0年11日)“液体を微粒子に噴射する方法事件本件明細書においては、まず、従来技術において、粒子径を0μ以下の微粒子に噴射できるノズルは、極めて詰まりやすいという欠点があることを指摘した上で、本件発明はその詰まりやすいという課題を解決することを目的とするものであることを説明し、さらに、課題解決手段の項でノズル試作段階の結果に触れ、いったん粒子径を5μとする微粒子が得られるノズルの試作に『成功』したが、同ノズルは、調整を誤ると粒子径が0ないし0μと急激に大きくなってしまう『欠点』があるので、さらなる試行錯誤の中で、0μ以下の微粒子が得られるノズルを製作し、最終的にはそのノズルの問題点を解決したとしている。そして、試作したノズルにおいて、1分間に100gの液体を噴射すれば、粒子径を0μ以下の微粒子の液滴を噴射することに『成功』することを説明している。これらの本件明細書の記載からすると、本件発明は、単に、ある程度粒径の小さな粒子が噴射されれば足りるというのではなく、液体を『極めて小さい微粒子』に噴射できることが重要な目的のひとつとして挙げられている・・・・ように、噴射される『微粒子』の大きさが極めて重要な意味を有するものであることから、本件発明において生成されるべき『微粒子』の粒径の範囲は特定されているものと解するのが相当である。そして、前記各記載においては、0μ以下の微粒子の噴射を『成功0ないし0μの微粒子の噴射を『欠点』と位置づけており、また、本件発明は、もともと、従来技術によった場合の粒子径0μ以下の微粒子に噴射できるノズルにおける欠点を解決することを目的としたものであるとしていることも踏まえると、本件発明において噴射されるべき『微粒子』は、粒子径0μ以下のものとして設定されており、本件発明の『液体を微粒子に噴射する』とは、高速流動空気によって押しつけられた液体の薄膜流が平滑面ないし傾斜面から離れるときに0μ以下の液滴の微粒子になることをいうと解するのが相当である」、「これに対し、原告は、上記の本件明細書の記載は例示にすぎない等と主張するが、前記のとおり、本件明細書の記載では、従来技術の課題、課題を解決するための手段及び発明の効果のいずれにおいても粒子径を0μ以下にすることが記載されているから、これらの記載を総合すれば、本件発明によって噴射される微粒子のあるべき粒子径として0μ以下という数値が設定されていると解するのが相当であり、これら記載を、単に例示として記載された数値にすぎないとする原告の主張は採用できない。また、原告は、被告特許において、0μの倍以上のサイズの粒子も『微粒子』と表現しているとも指摘するが『微粒子』という概念は一義的なものではなく、ある程度の幅を持ったものであることについては原告自身も認めるものであるところ、そのうちのどの粒子径の微粒子を生成するかは、各発明の目的等に応じて個別に設定されるべきことであり、仮に被告が他の発明において、0μを超える粒子径のものを『微粒子』と定義していたとしても、そのことは、本件発明において粒子径が0μ以下のものが微粒子であると主張することと何ら矛盾するものではない」と述べている。

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