知財高裁(平成30年1月22日)“2−ベンゾイルシクロヘキサン−1、3−ジオン事件”は、「本件訂正発明の課題は、優れた除草活性と作物に対する安全性を有する新規な2−ベンゾイルシクロヘキサン−1、3−ジオン化合物を提供することにあるものと認められる。・・・・検討したとおり、当業者は、本件訂正発明の化学物質の化学構造と従来技術の除草化学物質との共通性から、本件訂正発明に係る化学物質が、従来技術の除草剤の有効成分と同様に課題を解決できることを推認することができる」、「原告は、本件訂正明細書には、本件訂正発明に係る化学物質が除草活性を有することを裏付ける具体的な記載(試験デ−タ)は何もない・・・・と主張する。しかし、・・・・本件訂正明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて、本件訂正発明に係る化学物質が、従来技術の除草剤の有効成分と同様に課題を解決できることを推認することができるのであるから、・・・・発明の詳細な説明に具体的な実験デ−タがないことをもってサポ−ト要件違反とする、原告の主張を採用することはできない」、「原告は、本件共通構造をもった化合物であれば必ず除草活性を示すという技術常識はなく・・・・、また、本件訂正発明がサポ−ト要件を満足するとの根拠 (化学構造上の共通性)として本件審決が示した従来技術・・・・は限られた先行技術であって、当業者の技術常識とはいえない旨主張する。しかし、2−ベンゾイルシクロヘキサン−1、3−ジオン化合物(本件共通構造を有する化合物群)が除草活性を示すことが従来から知られていることについては、本件明細書・・・・に記載されているとおりである。そうすると、発明の詳細な説明において、請求項に係る発明が発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているものと認めるのが相当である」、「本件訂正発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、請求項の記載はサポ−ト要件を満たすものである」と述べている。 |