知財高裁(平成0年)“果菜自動選別装置事件訂正請求書における『その要旨を変更する補正』とは『請求の趣旨』に記載され特定された『請求を申し立てている事項』の同一性に実質的な変更を加えるような補正一般を指すというべきであり、補正の前後で訂正請求の審理範囲が実質的に変更される場合は、訂正請求書の要旨の変更に該当すると解すべきである。特許請求の範囲を減縮する訂正請求をした後に、上記減縮の範囲を狭める内容の訂正請求書の補正(補正後の訂正請求による特許請求の範囲が補正前の訂正請求による特許請求の範囲よりも広くなる補正)をする場合には、補正後の訂正請求による特許請求の範囲は訂正請求前の特許請求の範囲を減縮するものではあるが、補正の前後で訂正請求の審理範囲が実質的に変更されるときは、訂正請求書の要旨の変更に該当すると解すべきである」、「そこで検討するに、本件補正の補正事項3は、本件補正前の訂正事項0から、駆動ピンの横ブレを低減する作用効果を奏するための限定事項である・・・・構成A・・・・を削除することにより、特許請求の範囲を減縮する訂正請求についてその減縮する範囲を狭める内容の訂正請求書の補正をするものであり、補正後の訂正請求による特許請求の範囲が補正前の訂正請求による特許請求の範囲よりも広くなる補正をするものである。これによって、特許請求の範囲に、構成Aを有しないものが含まれることになり、構成Aが有していた特有の作用、効果を奏しないものも含まれることとなるから、補正の前後で訂正請求の審理範囲が実質的に変更されることとなり、訂正請求書の要旨を変更するものというべきである」、「原告は、訂正拒絶理由書における『訂正請求書の補正は、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等、訂正請求の要旨を変更しないものに限られます』という特許庁の記載について、補正事項3を要旨の変更と認定するのであれば、本件補正は原告が特許庁に欺罔された結果によるものであるから、禁反言の観点からも、当該補正を訂正請求の要旨の変更とした審決の判断は認められない旨主張する。しかし、補正事項3は、訂正事項0の内容の一部を変更するものであって、訂正事項を削除するものとは認められず、特許庁がこのような訂正事項の内容の一部変更を『訂正事項の削除』に該当するものとして訂正拒絶理由書に記載したとは認められないから、原告の上記主張は、前提を欠き、理由がない」と述べている。

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