大阪地裁(平成0年)“美容器事件本件発明2は、美容器に関するものではあっても、美容効果を生じさせるローラの性質や構造等に関するものではなく、ローラを回転可能に支持するところの軸受に関するものである。被告は、軸受部分が製造原価に占める割合は1.2%程度であり、これをもって本件発明2の寄与率とし、その限度で損害を算定すべきであると主張する。この点、特許の技術が製品の一部に用いられている場合、あるいは多数の特許技術が一個の製品に用いられている場合であっても、製品が発明の技術的範囲に属するものと認められる限り、1個の特許に基づいて、製品全体の販売等を差し止める事はできるが、製品全体の販売による利益を算定の根拠とした場合、本来認められるべき範囲を超える金額が算定されかねないことから、当該特許が製品の販売に寄与する度合い(寄与率)を適切に考慮して、損害賠償の範囲を適切に画する必要がある。本件発明2は、美容器のローラの軸受に関するものであるところ、寄与率は、上記のとおり、特許が製品の販売に寄与するところを考慮するものであるから、製品全体に占める軸受部分の原価の割合や、軸受部分の価格それ自体によって機械的に画されるものではなく、軸受がローラを円滑に回転し得るよう保持していることは、製品全体の中で一定の意義を有しているというべきであるが、軸受は、美容器の一部分であり、需要者の目に入るものではないし、被告が本件訴訟提起後に設計変更しているとおり、ローラが円滑に回転し得るよう支持する軸受の代替技術は存したと解されるから、本件発明2の技術の利用が被告製品の販売に寄与した度合いは高くなく、上記事情を総合すると、その寄与率は0%と認めるのが相当である」、「これとは別に、本件特許2の効力により被告製品が販売されなかった場合に、本来であれば原告において同数の原告製品を販売できたと推定すべきところ、これを覆すべき事情が存するかを検討する必要がある」、「原告製品は百貨店等で2万円以上の価格で販売され、微弱電流を発生する機能を有する高価品、高級品に位置づけられるのに対し、被告製品はディスカウントストア等で販売され、微弱電流を生ずる機能のない廉価品である。そうすると、本来原告製品の購入を希望していた需要者が被告製品を見て、類似した機能を有する製品を安く入手できるとしてこれを購入したような場合は、被告製品の販売がなければ、その需要が原告製品に向かう可能性はあるものの、高級品に位置付けられ、マイクロカレント等の特徴的な機能を有する原告製品とは異なり、ディスカウントストア等で販売され、前記機能を有しない廉価品であることを認識した上で被告製品を購入したような場合は、被告製品の販売がなかったとしても、その需要が原告製品に向かう可能性は低いと考えられる。以上の点、特に原告製品と被告製品との価格の違いが大きいことを考慮すると、被告製品の譲渡数量のうち5割について、原告には販売することができない事情があったとするのが相当である」、「特許法102条1項による原告の損害額は、被告製品の譲渡数量5万1724個のうち、5割については販売することができないとする事情があるから控除し、これに原告製品の単位数量当たりの利益額(省略●円及び本件特許2の寄与率0%を乗じることで、(省略●円となる(サイト注:寄与率を含めると5%が覆滅されたことに相当する」と述べている。

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