大阪地裁(平成30年12月13日)“プログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置事件”は、「本件発明1においてプロジェクトデータ自体は発明特定事項とはされていないから、その技術的範囲に属する物としては、プロジェクトデータをインストールすれば回路モニタ機能等が使用できる表示装置であれば足り、プロジェクトデータ自体がインストールされている必要はなく、基本機能OSと拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能部分がインストールされていれば足りると解するのが相当である」、「被告表示器Aはプログラマブル表示器であり、被告製品3はそれらにインストールするソフトウェアであり、・・・・被告表示器Aは被告製品3のソフトウェアがなければ作動せず、被告製品3のソフトウェアは被告表示器においてのみ有効に機能する関係にあると認められるから、ユーザがそれらの一方のみを使用することはないといえる」、「被告表示器A、被告製品3は、それらが個別に販売される場合はもとより、同一の機会に販売される場合であっても、被告製品3の基本機能OS及び拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能等部分のインストールがいまだされない状態であるから、それらは直接侵害品(実施品)としての構成を備えるに至っておらず、それを備えるにはユーザによるインストール行為が必要である。このような場合、・・・・ユーザの行為により物の発明に係る特許権の直接侵害品(すなわち実施品)が完成する場合であっても、そのための全ての構成部材を製造、販売する行為が、直接侵害行為と同視すべき場合があることは否定できない。しかし、構成部材を製造、販売する行為を直接侵害行為(すなわち実施品の製造、販売行為)と同視するということは、ユーザが構成部材から実施品を完成させる行為をもって構成部材の製造、販売とは別個の生産行為と評価せず、構成部材の製造、販売による因果の流れとして、構成部材の製造、販売行為の中に実質的に包含されているものと評価するということであるから、そのように評価し得るためには、製造、販売された構成部材が、それだけでは特許権の直接侵害品(実施品)として完成してはいないものの、ユーザが当然に予定された行為をしてそれを組み合わせるなどすれば、必ず発明の技術的範囲に属する直接侵害品が完成するものである必要があると解するのが相当である。換言すれば、ユーザの行為次第によって直接侵害品が完成するかどうかが左右されるような場合には、構成部材の製造、販売に包含され尽くされない選択行為をユーザが行っているのであるから、構成部材を製造、販売した者が間接侵害の責任を負うことはあっても、直接侵害の責任を負うことはないと解すべきである」、「このような観点から本件の事実関係について検討すると、・・・・被告表示器Aにおいて回路モニタ機能等を使用するためには、ユーザが、被告製品3をインストールしたパソコンで、動作設定を『回路モニタ』とする拡張機能スイッチが配置されたプロジェクトデータを作成する必要があり、拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ等部分が転送対象として自動的に選択されるのも、ユーザが上記のようなプロジェクトデータを作成した場合のみであると認められる。これを換言すれば、そもそもユーザによって上記のようなプロジェクトデータが作成されず、したがってこれが被告表示器Aにインストールされない場合には、ユーザが敢えて拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ等部分を転送対象として選択しない限り、被告表示器Aに回路モニタ機能等が備わることはないのである」、「以上のことを踏まえると、被告が販売した被告表示器Aや被告製品3だけでは、直ちに本件発明1の直接侵害品(実施品)が完成するわけではないし、ユーザが被告表示器Aを被告製のPLCに接続した上で、被告製品3の拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能等部分をインストールすることが必ず予定された行為であると認めることもできない。したがって、ユーザの行為によって直接侵害品が完成するかどうかが左右されるような場合に該当するといわざるを得ない」、「以上に対し原告は、被告が・・・・カタログにおいて、回路モニタ機能等を強調していることや、被告表示器Aが他の被告製品と比べて高額であること等からすると、本件発明1を全く実施しないという使用態様が被告表示器Aと被告製品3のユーザの下で経済的、商業的又は実用的な使用形態としてあるとは認められないと主張している。しかし、・・・・カタログで強調されているからといって、ユーザが必ず回路モニタ機能等を使用するとまで認めることはできない。原告は、他の回路モニタ機能等を使用できない被告製品・・・・との価格差も指摘するが、当該他の機種では回路モニタ機能等を使用することはできないものの、・・・・被告表示器Aと他の機種との画面サイズや機能の違いを踏まえると、被告表示器Aを購入する者が回路モニタ機能等を使用することを当然の前提としてこれを購入するものであるとまで認めることもできない」、「本件発明1を全く実施しないという使用態様が、被告表示器Aと被告製品3の経済的、商業的又は実用的な使用形態でないと認めることはできないから、原告の上記主張は採用できない」、「以上より、被告による被告表示器Aと被告製品3の製造、販売等の行為は本件特許権1の直接侵害行為に該当しない」と述べている。 |