大阪地裁(平成30年12月13日)“プログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置事件”は、「特許法101条2号においては、・・・・発明に係る特許権の直接侵害品の生産に用いる『物がその発明の実施に用いられること』(主観的要件A)を知りながら、その生産、譲渡等をすることが間接侵害の成立要件として規定されている」、「特許法101条2号の間接侵害は、適法な用途にも使用することができる物(多用途品)の生産、譲渡等を間接侵害と位置付けたものであるが、その成立要件として、主観的要件Aを必要としたのは、対象品(部品等)が適法な用途に使用されるか、特許権を侵害する用途ないし態様で使用されるかは、個々の使用者(ユーザ)の判断に委ねられていることから、当該物の生産、譲渡等をしようとする者にその点についてまで注意義務を負わせることは酷であり、取引の安全を著しく欠くおそれがあることから、いたずらに間接侵害が成立する範囲が拡大しないように配慮する趣旨と解される。このような趣旨に照らせば、単に当該部品等が特許権を侵害する用途ないし態様で使用される一般的可能性があり、ある部品等の生産、譲渡等をした者において、そのような一般的可能性があることを認識、認容していただけで、主観的要件Aを満たすと解するのでは、主観的要件Aによって多用途品の取引の安全に配慮することとした趣旨を軽視することになり相当でなく、これを満たすためには、一般的可能性を超えて、当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあり、そのことを当該部品等の生産、譲渡等をした者において認識、認容していることを要すると解するべきである。他方、主観的要件Aについて、部品等の生産、譲渡等をする者において、当該部品等の個々の生産、譲渡等の行為の際に、当該部品等が個々の譲渡先等で現実に特許発明の実施に用いられることの認識を必要とすると解するのでは、当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあることを認識、認容している場合でも、個別の譲渡先等の用途を現実に認識していない限り特許権の効力が及ばないこととなり、直接侵害につながる蓋然性の高い予備的行為に特許権の効力を及ぼすとの特許法101条2号のそもそもの趣旨に沿わないと解される。以上を勘案すると、主観的要件Aが認められるためには、当該部品等の性質、その客観的利用状況、提供方法等に照らし、当該部品等を購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在し、部品等の生産、譲渡等をする者において、そのことを認識、認容していることを要し、またそれで足りると解するのが相当であり、このように解することは、『その物がその発明の実施に用いられることを知りながら』との文言に照らしても不合理な解釈ではない」、「被告による宣伝広告の内容やその方法、経緯等に照らせば、被告製品3を購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在すると認められ、被告もそのことを認識、認容しながら被告製品3の生産、譲渡等を行ったと認めることができる」、「被告は、悪意を否定する根拠として被告製品3を販売代理店を通じて販売していたことを指摘しているが、そうであるとしても、そのことは、被告が個々のユーザの実際の用途を具体的に知らないということを推認させるにとどまる。上記認定の宣伝広告の内容やその方法、経緯等に照らせば、被告は被告製品3を生産、譲渡等する者として、ユーザが着目するであろうポイントを認識し、当然、その前提として、ユーザのニーズも予想していたことが推認されるから、ユーザとの間に販売代理店が介在しているからといって、被告が被告製品3を購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとの上記認定が左右されるとはいえない。また、被告は、悪意を否定する根拠として、・・・・回路モニタ機能等を使用するのに必要なオプション機能ボードを購入した者が約4分の1であることを指摘し、さらにそれを購入した者が回路モニタ機能等を使用しているとは限らないなどと主張している。しかし、被告が主張する割合は裏付けを伴って立証されているわけではなく、また、被告の主張を仮に前提としても約4分の1という割合は『例外的』といえるほどの割合でもないから、被告の上記主張によっても、上記認定は左右されないというべきである」と述べている。 |