大阪地裁(平成0年)“プログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置事件「本件のように間接侵害品が部品であり、特許権者等が販売する物が完成品である場合には、前者は部品市場、後者は完成品市場を対象とするものであるから、両者の譲渡・販売行為が同一の市場において競合するわけではない。しかし、この場合も、間接侵害品たる部品を用いて生産された直接侵害品たる実施品と、特許権者等が販売する完成品とは同一の完成品市場の利益をめぐって競合しており、いずれにも同じ機能を担う部品が包含されている。そうすると、完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限りでは、間接侵害品たる部品の譲渡行為は、それを用いた完成品の生産行為又は譲渡行為を介して、特許権者等の完成品に包含される部品相当部分の販売行為と競合する関係にあるといえるから、その限りにおいて本件のような間接侵害行為にも特許法102条1項を適用する素地がある」、「本件のような間接侵害の場合の『侵害の行為がなければ販売することができた物』とは、特許権者等が販売する完成品のうちの、侵害者の間接侵害品相当部分をいうものと解するのが相当である」、「そうすると、本件での『侵害の行為がなければ販売することができた物』とは、原告の製品全体のうちの、被告製品3に対応するプログラム(ソフトウェア)部分である」、「(ア)原告の製品全体の平成5年度の1台当たりの限界利益額が(省略●円であることは、当事者間に争いがなく・・・・、その他の年度についても同様と推認されるところ、上記・・・・で認定したとおり『侵害の行為がなければ販売することができた物』に当たるのは原告の製品のうちのプログラム(ソフトウェア)部分であるから、原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額をもって『単位数量当たりの利益額』に当たるとみるべきことになる」、「この点に関し、被告は、自らの製品のカタログ・・・・記載の表示器(被告製品1−1)とソフトウェア(被告製品3−1)の参考標準価格を参考にして、原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額を算出すべき旨主張している。これに対し、原告は被告が被告表示器の価格を高く設定し、ソフトウェアである被告製品3の価格を低く設定するビジネスモデルをとっているから、被告の価格設定を参考とすべきではなく、本件発明1の価値の高さに鑑み、ソフトウェア部分の寄与度は9割を下らないと主張する」、「被告製品1−1の参考標準価格は2万円から3万円、被告製品1−2の参考標準価格は2万円から3万円であるのに対し、被告製品3−1の参考標準価格は、単体ライセンス品で(省略万円、200ライセンスまで登録可能なサイトライセンス品で4万円である・・・・。このように、サイトライセンス品と単体ライセンス品との価格差がわずかであり、被告表示器のような生産設備に用いる装置の場合、通常は複数台が購入され、その場合にはサイトライセンス品が購入されると考えられることからすると、通常の場合には、被告表示器1台当たりに必要なソフトウェア費用が極めて安価になり、原告が指摘するようなソフトウェアで利益を上げないビジネスモデルが存在している可能性もある。そのため、サイトライセンス価格や実際の被告表示器1台当たりのソフトウェア費用・・・・を参考として、被告表示器の参考標準価格と比較する場合には、ソフトウェアの価値が不当に低く算定されることになり、相当でないと考えられる。しかし、単体ライセンス品の参考標準価格を用いる場合には、被告表示器1台のみを購入する場合が想定されるから、この場合にはソフトウェアによる採算も軽視されないはずであるし、単体ライセンス品の参考標準価格は(省略万円であるから、被告表示器のようなハードウェアと被告製品3のようなソフトウェアに要する一般的な原価の差も考えると、ハードウェアとソフトウェアの価値が相応に反映されていると考えられる。他方、原告は、原告の製品における本件発明1の寄与度が9割を下らないと主張するが、・・・・従来技術を参酌して導かれる本件発明1の特徴的技術手段は、表示されたラダー回路の出力要素を指定して入力要素を検索するに当たり、出力要素の指定をタッチにより行うという点にすぎないから、製品全体に対するその寄与度は9割を大きく下回ると考えられる。以上からすると、本件で原告の製品の利益におけるソフトウェア部分の利益を算定するには、被告表示器1A(サイト注:被告製品1−1及び1−2)と被告製品3−1の参考標準価格を参考にして原告の製品におけるソフトウェア部分の限界利益額を算定するほかないというべきである。これを参考にして被告表示器1Aと被告製品3−1の合計額に占める被告製品3−1の価格割合を算定すると、被告表示器1A(ただし、被告製品1−2のうちそもそも回路モニタ機能等を使用できない機種及び生産を終了した機種は除く)のカタログ記載の参考標準価格は、平均すると(省略●円(税抜)であり・・・・、被告製品3−1の通常の単体ライセンス品の参考標準価格は(省略●万円である(税抜)から、被告製品3−1の価格の全体に占める割合は、(省略●%(0.1%未満四捨五入)と認められる。なお、被告は被告製品1−1の参考標準価格の平均値をもとに算定しているが、被告製品3−1がインストールされて回路モニタ機能等が使用され得る被告製品には被告製品1−2も含まれるから、被告製品1−2の参考標準価格も参考にすべきである」、「以上より、原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額(1台当たりの金額)は、上記(ア)記載の金額に(省略%を乗じた4118円と認められる」と述べている。

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