知財高裁(平成30年12月18日)“二次元コード事件”は、「共同で特許無効審判が請求され、無効審決がされたのに対し、被請求人が共同審判請求人の一部の者のみを被告として審決取消訴訟を提起した場合の規律について検討する。同一の特許権について特許無効審判を請求する者が二人以上あるときは、これらの者は、共同して審判を請求することができる(特許法132条1項)。これは、本来、各請求人は、単独で特許無効審判請求をし得るところ、同一の目的を達成するためにこのような共同での審判請求を行い得ることとし、審判手続及び判断の統一を図ったものである。もっとも、この場合の審決を不服として提起される審決取消訴訟につき固有必要的共同訴訟であるとする規定はなく、審決の合一的確定を図るとする規定もない。また、同一特許について複数人が同時期に特許無効審判請求をしようとする場合の特許無効審判手続の態様としては、@上記の共同審判請求の場合のほか、A別個独立に請求された審判手続が併合された場合(同法154条1項)、B別個独立に請求された審判手続が併合されないまま進行する場合の3つが考えられる。しかるところ、まず、上記Bの場合において無効審決がされたときは、その取消訴訟をもって必要的共同訴訟と解する余地がないことに鑑みると、事実及び証拠が同一であるか異なるかに関わりなく、複数の特許無効審判請求につき、請求不成立審決と無効審決とがいずれも確定するという事態は、特許法上当然想定されているものということができる。また、別個独立に請求された審判手続がたまたま併合された上記Aの場合において無効審決がされたときも、上記Bの場合と取扱いを異にすべき合理的理由はない。そうすると、上記@の場合に、被請求人である特許権者の共同審判請求人に対する対応が異なった結果として上記と同様の事態が生じることも、特許法上想定されないこととはいえない。@及びAの場合にされた請求不成立審決に対し、その請求人の一部のみが提起した審決取消訴訟がなお適法とされる(最高裁平成・・・・12年1月27日・・・・判決・・・・、最高裁平成・・・・12年2月18日・・・・判決・・・・参照)のも、このためと解される。このように、共同審判請求に対する審決につき合一的確定を図ることは、法文上の根拠がなく、その必然性も認められないことに鑑みると、その請求人の一部のみを被告として審決取消訴訟を提起した場合に、被告とされなかった請求人との関係で審決の確定が妨げられることもないと解される」、「被告は、・・・・複数の審判請求人(サイト注:被告と訴外会社)がいる場合の無効審決に対する審決取消訴訟は固有必要的共同訴訟であり、被告のみを相手方として提起した原告らの本件訴えは不適法であるなどと主張する。しかし、前記のとおり、共同審判請求に対する審決につき合一的確定を図ることは法文上の根拠がなく、その必然性も認められないことから、当該審決に対する取消訴訟をもって固有必要的共同訴訟ということはできない」、「そうすると、共同での特許無効審判請求に対し無効審決がされたところ、被請求人である特許権者が、共同審判請求人の一部のみを被告として当該審決の取消訴訟を提起したにとどまり、被告とされなかった共同審判請求人との関係で出訴期間を経過した場合には、同人との関係で当該無効審決が確定し、当該特許権は対世的に遡って無効となることから、上記審決取消訴訟は、訴えの利益を欠く不適法なものとして却下されるべきこととなる」と述べている。 |