知財高裁(平成30年12月20日)は、「外国語特許出願の出願人に対し明細書等翻訳文の提出を義務付ける特許法184条の4第1項の規定や、所定の期間内に明細書等翻訳文の提出がなかった場合、その国際特許出願は取り下げられたものと擬制する特許法184条の4第3項の規定は、それぞれ、特許協力条約22条(1)及び24条(1)(B)に基づくものである(同条約22条(1)は、国際出願の出願人に対し優先日から30か月を経過する時までに『所定の翻訳文』を提出することを義務付けており、同条約24条(1)(B)は、出願人が当該翻訳文の提出を期間内にしなかった場合、指定国において、当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅するものと定めている。)。そして、同条約24条(2)は、同条(1)の規定にかかわらず、指定官庁は国際出願の効果を維持することができる旨定めているが、これは、同条約の締結国が、翻訳文の提出がない場合の国際出願の効果について、同条約24条(2)を採用するか否かを各締結国に委ねる趣旨であることが明らかである。このように、特許法184条の4第3項は、特許協力条約の定めに従って規定がされたものであり、それ自体としては何ら同条約に違反するものではない。また、外国語特許出願の出願人に対し明細書等翻訳文の提出を義務付ける特許法184条の4第1項の規定は、内国民と外国国民を区別しておらず(内国民であろうと外国国民であろうと、外国語特許出願を行えば、当然に明細書等翻訳文の提出が必要となる。)、所定の提出期間内に明細書等翻訳文の提出がなかった場合、その国際特許出願は取り下げられたものと擬制する特許法184条の4第3項の規定も、何ら内国民と外国国民との間でその取扱いを異にするものではなく、内国民と外国国民とを同列に扱っているといえるから、それ自体が、内国民待遇の原則に反するということもできない」と述べている。 |