東京地裁(平成30年12月21日)“骨切術用開大器事件”は、「本件発明の揺動部材の一部に係合部を設ける構成を角度調整器のピンと留め金の突起部に置き換えることについて、当業者が、被告製品の製造時において、容易に想到し得たかどうかについて検討する。本件発明は、2対の揺動部材のうち、一方に係合部(実施例では突起9)を設け、他方にこれと係合する部分(実施例では凹部10)を設けることにより、当該一方の揺動部材から他方の揺動部材に力を伝達して、両揺動部材が同時に開くことを可能にするものであるが、一般的に、ある部材から他の部材に力を伝達する際に、2つの部材を直接係合させて力を伝達するか、2つの部材に同時に係合する第3の部材を介して力を伝達するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項であるということができる。そうすると、本件発明のように2対の揺動部材の一方に他方に係合する係合部を設けて直接力を伝達することに代えて、2対の揺動部材に同時に係合する第3の部材(角度調整器及び留め金)を介して力を伝達するようにして被告製品のような構成とすることは、被告製品の製造時において当業者が容易に想到することができたと認めるのが相当である」、「これに対し、被告は、本件発明の係合部材を角度調整器のピンや留め金の突起部に置き換えることは本件明細書等に開示も示唆もされておらず、そのような置換をすると部品点数が増え、構造がより複雑になるので、当業者がそのような置換をすることを容易に想到し得たということはできないと主張する。しかし、本件発明の揺動部材の一部に係合部を設ける構成を角度調整器のピンと留め金の突起部に置き換えることについて本件明細書等に開示又は示唆がないとしても、そのことから直ちに被告製品の製造時において当業者が容易に想到し得ないということはできず、・・・・一般的に、ある部材から他の部材に力を伝達する際に、2つの部材を直接係合させて力を伝達するか、2つの部材に同時に係合する第3の部材を介して力を伝達するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項であるということができる。また、本件発明の揺動部材の一部に係合部を設ける構成を角度調整器のピンと留め金の突起部に置き換えたとしても、部品点数が大幅に増えるものではなく、構成が複雑になるものではないから、部品点数や構造の複雑化を根拠に、当業者が係る置換を容易に想到し得ないということはできない」、「したがって、被告製品は第3要件を充足する」と述べている。 |