知財高裁(平成30年12月26日)“チューブ状ひも本体を備えたひも事件”は、「控訴人は、本件共同出願契約書13条は、本件固定的役割分担合意を規定するものであり、本件固定的役割分担合意の一部が特許法73条2項の『別段の定』に該当すると主張するところ、・・・・本件共同出願契約書には、中国語で記載され、作成日付及び本件4者の署名があるもの(甲6契約書)と、日本語で記載され、作成日付及び本件4者の署名がないもの(甲5契約書)とがあるが、甲6契約書には作成日付及び署名があることに加え、B及びAが中国語を理解し日本語を理解しないこと、甲6契約書は被控訴人従業員が中国語に翻訳したものであり、控訴人も中国語を理解すること・・・・を併せ考慮すると、本件4者は、作成日付及び署名がある甲6契約書をもって、本件共同出願契約を締結したと認めるのが相当である」、「甲6契約書13条には、『事前の協議・許可なく、本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し、又は生産・販売行為を行った場合、本件の各権利は剥奪される。・・・・』と記載されている。同条の『生産・販売行為』の対象は、その文理に照らし、『本件の各権利(本件特許権)』の実施品であると合理的に解釈できるから、同条は、契約当事者間において『本件の各権利(本件特許権)』の実施品の生産・販売行為を制限する趣旨の条項である。そうすると、契約当事者の合理的意思として、同条の『事前の協議・許可なく』とは、『事前の協議及び許可なく』の意味であると解釈でき、同条の『生産・販売行為』とは、『生産又は販売行為』の意味であると解釈できる。前者では『・』を『及び』と解釈し、後者では『・』を『又は』と解釈することになるが、いずれも契約当事者の合理的意思に沿うものであり、矛盾はない。また、・・・・本件特許権1は、甲6契約書にいう『本件特許権』に該当する。以上によると、同条は、本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産又は販売をすることについて、事前の協議及び許可を要するものとして制限するものであるから、特許法73条2項の『別段の定』に該当する。そして、・・・・被控訴人(サイト注:一審被告)は、平成28年4月以降、日本において、本件製造会社に本件発明1−1の実施品である被告各商品を製造させ、被告各商品を独自に販売しているが、これについて、事前の協議及び許可を経たことは、本件全証拠によっても認められない。したがって、被控訴人が、平成28年4月以降、日本において、本件製造会社に本件発明1−1の実施品である被告各商品を製造させ、被告各商品を独自に販売したことは、『別段の定』である甲6契約書13条に違反するものである」、「以上のとおり、特許法73条2項の『別段の定』が存するから、被控訴人は、本件発明1−1の技術的範囲に属する被告各商品を製造・販売し、もって本件特許権1を侵害したものと認められる」と述べている。 |