大阪地裁(平成30年2月15日)“医療用軟質容器事件”は、「原告は、法102条2項による損害賠償を求め、被告が被告製品の販売により受けた利益の額全額を原告の受けた損害の額と推定される旨主張するところ、・・・・被告は、@本件発明が実施されているバッグ部分は被告製品の一部であり、バッグ部分の寄与する割合は●(省略)●にとどまること、A被告製品には、本件発明以外の特許発明、意匠が実施されており、本件発明が寄与する割合は10%であること、B被告製品の売上は、被告の営業力、ブランド力によるものであり、技術面の寄与度はせいぜい30%であるとして、この割合を順次乗じて損害額を減じるべき旨主張する」、「本件発明は、医療用軟質容器を用いた栄養供給システムのうち、医療用軟質容器すなわちバッグ部分に関する発明であるところ、証拠・・・・によれば、本件で対象とする被告製品は、容量、チューブ径のほか、チューブ、ドリップチャンバ、流量調節器(ローラークランプ)、コネクタ等からなる輸液セットと組み合わせの有無で7つの商品名の製品に区別できるが、うち・・・・被告製品7は、別売されているチューブ、ドリップチャンバ、流量調節器(ローラークランプ)、コネクタ等からなる輸液セットと組み合わせて使用するものであり、その余の6つの被告製品は、これら輸液セットが予め一体となった製品であることが認められるから、これらの事実関係のもとで被告が侵害行為により受けた利益の額は、被告製品の販売により受けた利益の額全部をいうのではなく、本件発明の対象とするバック部分の販売により受けた利益の額を言うのが相当である。そして、証拠・・・・によれば、輸液セット込での被告製品の販売価格は1枚当たりおよそ●(省略)●であるのに対し、輸液セット単体での販売価格は●(省略)●前後であること、被告製品のうちのバッグ部分の占める原価構成率は●(省略)●前後であること等を総合すると、被告が侵害行為により受けた利益の額は、上記の点で被告製品販売により受けた利益の額の●(省略)●の限度で減じるのが相当である」、「被告製品は、確かに乙40発明ないし乙43発明及び乙44意匠ないし乙46意匠を実施しているが、本件発明に技術的に付与するものは乙43発明のみであり、その付与の程度がさほど大きくないことは上記(サイト注:『乙43発明に、本件発明において特定されていないチャック部と開閉操作部の位置関係を特定することで進歩性があるとしても、・・・・片手操作で栄養剤注入するという本件発明の改良形にすぎないことは明らかであって、本件発明1を実施している以上に技術的に積極的な意味はなく、被告製品の販売拡大に貢献している程度はさほど大きいものとは認められない』)のとおりである。したがって、その事情が、法102条2項の推定覆滅事由となるにしても、5%を減じるにとどまるというべきである」、「証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、連結売上高で原告は576億3600万円であるのに対し、被告は3596億9900万円であり、従業員数でも原告はグループ総数で6777名にとどまるのに対し、被告のそれは2万7415名であって、企業規模としては被告の方が圧倒的に大きく、したがって原告が全国に支社、営業所を有していることを考慮しても、営業力、ブランド力とも被告の方が強いことは否定できない。しかし、証拠・・・・によれば、本件で問題とすべき経腸栄養バッグ(空バッグ)の分野に限れば、当該市場は、●(省略)●のシェアを占め、その余を他社が占めるというのであり、とりわけ『片手の指を挿入するためのシート状の1対の開閉操作部』を有する経腸栄養バッグに限れば、市場には原告と被告の製品以外は存しないから、市場を●(省略)●を占めるという関係にあり、当該分野に限れば、限られた需要者の間において原告がブランド力を確立していることは容易に推認され、原告との間で、営業力、ブランド力の差が生じているものとは認められない。したがって、原告と被告の営業力、ブランド力の差をもって、法102条2項による推定が覆滅されるとする被告の主張は採用できない」、「以上を総合すると、法102条2項の規定により原告の損害として認定されるべき額は、・・・・被告製品の販売により受けた利益の額●(省略)●に、上記・・・・で認定した減額事由を考慮し、以下の計算式のとおり3718万0364円と認定するのが相当である。(計算式)●(省略)●=37,180,364円」と述べている。 |