知財高裁(平成0年2)“ソルダペースト組成物事件本件発明1においては、酸化防止剤の分子量が少なくとも500であるとの限定を有するが、以下のとおり、このような限定を付すことによって格別の効果が得られたことを裏付けるに足りる証拠はないから、本件発明1の効果は、甲1文献及び本件特許出願当時の技術常識から当業者にとって予測し得ない格別顕著なものであるとは認められない。すなわち、本件明細書には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤・・・・を含む実施例1及び・・・・実施例2と、酸化防止剤を含まない比較例についてのリフロー試験を行い、実施例1及び2は、プリヒート温度が150℃の場合にもはんだ付け性は良好であるが、同温度が200℃の場合には特に優れ、その他の性能も劣るものはないと記載されている(表1・・・。具体的には、表1には、プリヒート温度が200℃、120秒の場合の評価は、実施例1が5、実施例2が4であったのに対し、比較例は1とされている。この結果から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤・・・・を含む本件発明1のソルダペーストは、酸化防止剤を含まないソルダペーストとの比較においては、はんだ付け性に優れるということはできる。しかし、本件明細書には、ヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤として、分子量が500未満であるものを含むソルダペーストと本件発明1のソルダペーストを比較した試験は記載されていない。そうである以上、本件明細書の記載から、本件発明1は、分子量が少なくとも500であるヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤を含むことにより、甲1発明に対して顕著な効果を奏するということはできない。加えて、本件明細書には、本件発明1でヒンダードフェノール系化合物の分子量を少なくとも500とすることについて『ヒンダードフェノール系化合物としては、特に限定されないが、・・・・分子量50以上のものが、熱安定性が優れるという理由で、特に好ましい・・・・というように、熱安定性に優れるとの記載はあるものの、ヒンダードフェノール系化合物の分子量が50未満である場合と比較して、リフロー特性に優れるソルダペースト組成物が得られることについては何ら記載されていない。そうである以上、本件発明1における酸化防止剤の分子量に臨界的意義があるということはできない」、「本件審決は、本件発明1につき、甲1発明からは当業者が予測し得ない効果を奏するものであり、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないとした点で、その判断に誤りがある」と述べている。

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