知財高裁(平成30年2月6日)“生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置事件”は、「控訴人は、平成25年2月15日以前に、被控訴人は控訴人が本件装置(WK型)を販売している事実を知っており、また、個々の生産者に対する取引も認識していたことから、平成25年2月15日以前の取引による控訴人に対する損害賠償請求権については消滅時効が完成している旨主張する。この点に関する控訴人の主張は、@控訴人がパンフレットに広告を掲載している大阿蘇夏期講習会に被控訴人(ないしフルテック)も出展しているところ、上記控訴人の広告には、控訴人が渡邊機開製品を取り扱っていることが記載されていたことや、A控訴人と被控訴人とは取引関係にあり、相互間の情報交換は頻繁に行われていたという事情、また、B控訴人は渡邊機開製品と被控訴人製品のいずれも販売しており、海苔生産者の作業場に渡邊機開製の生海苔異物除去機と被控訴人の製品が一緒に、かつ近接した場所に設置されることも多いという事情を考慮すれば、被控訴人は、控訴人による本件装置(WK型)の販売の事実を容易に知り得たとすることに依拠する。しかし、民法724条前段の消滅時効の起算点は、被害者等が『損害及び加害者を知った時』すなわち違法行為による損害の発生及び加害者を現実に了知した時点である。しかるに、@については、大阿蘇夏期講習会資料・・・・に掲載された控訴人の広告には、取扱商品に渡邊機開製品が含まれることは示されているものの、それに本件装置(WK 型) が含まれていることは具体的に明示されていない。また、控訴人指摘に係る上記ABの各事情は、いずれも被控訴人において控訴人が本件装置(WK 型)を販売した事実を認識し得た可能性をうかがわせるものではあるものの、被控訴人が当該事実を現実に了知していたことを直接的に裏付けるものではないし、被控訴人と控訴人ないし海苔生産者との個別的な場面での具体的なやり取り等に関わりなく、そのような現実の了知を推認させるに足りる事情ということもできない。そうすると、被控訴人が平成25年2月15日以前に『損害』及び『加害者』を知っていたと認めることはできない。この点に関する控訴人の主張は採用し得ない」と述べている。 |