東京地裁(平成30年3月1日)“ブルニアンリンク作成デバイス事件”は、「本件発明2はブルニアンリンクを作成するための装置又はこれを含むキットに係る発明であり、各被告製品を構成する部材のうち、編み機、フック、クリップ及び弾性バンドは、本件発明2の実施品というべきであるから、被告製品1については、その全体について本件発明2が実施されているというべきである。他方、被告製品2については、本件発明2の実施品(編み機、フック、クリップ及び弾性バンド)に加え、本件発明2の実施品ではないビーズ100個及び本件解説本から構成されている。この点に加えて、被告製品1と被告製品2の各売上比率等をも勘案すると、各被告製品の限界利益の概ね25%について、侵害品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合の観点から推定覆滅を認めることが相当である」、「本件発明2は、ブルニアンリンクアイテムの作成が個人の技量に依存するという課題を解決し、個人の技量に依存することなく、様々な技量レベルの人々にブルニアンリンクアイテムを簡単に作成するキットを提供することを可能とするものであって・・・・、このような本件発明2の作用効果に加え、・・・・被告製品1の全部及び被告製品2の中心である編み機、フック、クリップ及び弾性バンドについて、それぞれ本件発明2が実施されていることや、本件発明2を除く各被告製品の性能、デザイン等の特徴が需要者の購買意欲に殊更に影響していることを認めるに足る証拠はないこと等に照らせば、本件発明2の実施品であることが各被告製品に対する需要者の購入意欲に大きく結びついているものと考えられる。他方、証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、被告ハナヤマは、玩具メーカーとして長年我が国において営業を続けてきたことから、各被告製品についても、その販売のターゲットを小学生の女児に絞り、したがって、その販路も玩具販売を目的とするものに集中しており、また、広告宣伝等についても、対象期間中に小学生の女児という顧客層にターゲットを絞った多くの広告宣伝活動や販促・営業活動を行ったこと、一方、原告は、特にそのように販売のターゲットを絞っていなかったため、原告製品の販路や宣伝広告等も特に小学生の女児をターゲットとして絞り込んだものではなかったこと、被告ハナヤマが原告とは異なる販路(取引先)を相当程度有していたことも認められるのであって(なお、被告らは、これらに加えて、被告ハナヤマの営業戦略や販路、ブランド力が原告よりも優れていたとも主張するが、同事情を認定するに足る証拠はない。)、このような事情も推定覆滅の一事情として考慮すべきである。もっとも、上記のとおり、本件発明2の実施品であることが各被告製品についての需要者の購入意欲に大きく結びついていることや、本件発明2を除く各被告製品の性能、デザイン等の特徴が需要者の購買意欲に殊更に影響しているとは認められないこと等に鑑みれば、このような被告ハナヤマの広告宣伝活動や販促・営業活動が一定程度各被告製品の売上に貢献していること、原告と被告ハナヤマの広告宣伝のターゲットとなる顧客層が異なることや、取引先・販路の相違等を考慮しても、大幅な推定覆滅を認めることは相当ではない。以上の点を総合考慮すると、各被告製品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合以外の観点からの推定覆滅割合については、25%と認めるのが相当である」、「以上によれば、法102条2項の推定に係る推定覆滅の割合については、50%(25%+25%)と認めるのが相当である」と述べている。 |