大阪地裁(平成0年3)“スプレー缶用吸収体事件原告は、入手した被告製品の灰分量を測定し、その測定結果・・・・に基づき、被告製品のほぼ全量が灰分含有量を特定した特定被告製品であり、構成要件B(サイト注:灰分を1重量%以上0重量%未満の範囲で含有するセルロース繊維集合体から構成される吸収体)及びF(サイト注:灰分を1重量%以上2重量%未満の範囲で含有するセルロース繊維集合体から構成される吸収体)を充足する旨主張するところ、被告は、原告の用いた灰分量の測定方法そのものから争い、被告の測定方法及び測定結果・・・・によれば、被告製品は構成要件B及びFを充足しないと主張する」、「そこで、まず灰分量の測定方法について検討すると、本件明細書・・・・には、実施例における測定方法の記載があり、本件明細書中に他の測定方法の記載はみられないことから、測定方法は、この・・・・方法によるべきである。そして、そこに記載がない事項については、工業製品である被告製品の性質上、紙、板紙及びパルプを525℃で燃焼した際の灰分を測定する方法についての・・・・日本工業規格・・・・を参考にするのが相当であり、以上の限度においては、原告及び被告ともに、その測定方法の理解に相違があるわけではない」、「原告と被告が実施した測定方法の違いは、・・・・原告は、被告製品の内容物をそのまま試料としているが、被告は、これから不純物を除去しているという・・・・点にある」、「本件発明にいう『セルロース繊維集合体』は、被告製品の内容物をいい、不純物が混入することも予め想定されているから、灰分量の測定は、被告製品の内容物をそのまま試料とすべきであり、これと異なり、これから不純物を除去したものを試料に用いた被告の測定結果・・・・は採用できないということになる。すなわち、本件明細書の記載によれば、本件発明にいう『セルロース繊維集合体』は、古紙等の原料を粉砕、解繊し、微細化したものの集合体を指すものであって、セルロース繊維のみではなく、製紙工程で古紙原料に添加される炭酸カルシウムやタルク等の無機物質が含まれることが想定されているというのであり・・・・、また原料が古紙等に由来するものも含むということに加え、構成要件A及びBからすると『セルロース繊維集合体』は、スプレー缶の内容物を指すと解されるから、その収容に至るまでの一連の製造工程において塵や埃状の物質が混入することも避けられないと考えられるが、本件明細書に記載された灰分の測定方法・・・・には、混入物を除去することを示唆する記載は一切ない。また、実際問題として、被告が主張するように、被告製品に塵や埃状の物質、あるいは製造過程で意図せず混入した錆や塗料等に由来するものがあるとしても、除去すべきではないセルロース繊維は完全に残し、他方で、それ以外の不純物のみを完全に除去し切れるとはおよそ考えられないから、そのような作業は灰分量を測定する上で想定されているとは考えられない(被告の測定方法を説明した陳述書・・・・ をみても、被告のいう不純物が、古紙由来の物質であるのか否かを的確に識別できるとは考えられない。)。したがって、被告製品の灰分の測定方法としては、被告製品の内容物をそのまま試料として用いるべきであって、不純物が含まれるとして、その一部を除去した対象を試料として測定した被告の測定結果・・・・は採用できない」と述べている。

特許法の世界|判例集