大阪地裁(平成0年3)“スプレー缶用吸収体事件「構成要件Cの『スプレー缶形状に対応する形状に成形された上記吸収体を収容し』につき、原告は物の発明としてのスプレー缶製品の構成部材である吸収体の客観的な構成を特定するものでしかないと主張しているのに対し、被告はスプレー缶に収容される前の段階で予め吸収体を『スプレー缶形状に対応する形状に成形』し、次いで上記吸収体をスプレー缶に収容することを意味すると解すべきであると主張している。被告の主張は、構成要件中『成形』、『収容』、『配設』という文言が工程を意味しており、その先後関係が問題となることから製造方法を特定しているというものであるが、構成要件中に明示的な形で吸収体のスプレー缶内への収容と吸収体の成形の時間的な先後関係が触れられているわけではないから、この部分は、スプレー缶製品が完成した段階で、吸収体が客観的な構成として、スプレー缶形状に対応する形状に成形された状態でスプレー缶内に収容されているということを特定したと解することも可能である」、「そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、・・・・少なくとも被告の構成要件Cの解釈、すなわち予め吸収体を『スプレー缶形状に対応する形状に成形』し、次いで上記吸収体をスプレー缶に収容する製造方法とは明らかに異なる製造方法が記載されている」、「以上のことを踏まえると、構成要件Cが、スプレー缶に収容される前の段階で予め吸収体を『スプレー缶形状に対応する形状に成形』し、次いで上記吸収体をスプレー缶に収容する構成に限られないことは明らかであり、構成要件Cの『スプレー缶形状に対応する形状に成形された上記吸収体を収容し』という文言は、スプレー缶製品が完成した段階で、吸収体が客観的な構成として、スプレー缶形状に対応する形状に成形された状態でスプレー缶内に収容されているということを記載したものと解するのが相当である」、「被告は、本件発明1、2及び6が、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合に当たることを前提として、明確性要件違反があると主張している。しかし、上記・・・・で認定説示のとおり、構成要件Cの『成形』や『収容』が製造方法に関する記載であるとは認められないから、被告の主張はその前提を欠き、採用することができない」と述べている。

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