大阪地裁(平成30年3月29日)“二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物事件”は、「被告は、本件出願の経過における原告の主張内容(乙4、5)を指摘して、それと異なる主張をすることは信義則違反であるなどとも主張している。しかし、被告が指摘する乙4及び5の記載は、その内容に照らせば、本件発明の組成物中に気泡状の二酸化炭素が保持され、持続的に放出されることによる作用効果を説明したものであって、その量を問題としたものと認めることはできない。確かに、原告は、出願経過の拒絶査定不服審判の理由を述べた手続補正書において、本件明細書記載の試験結果について、それらで実証されている効果は、皮膚への二酸化炭素の浸透作用が極めて高いことに基づく格別の効果であり、二酸化炭素による単なる血行促進作用等から予測できるものではないことを強調している。しかし、原告は、上記手続補正書において、本件発明が格別の効果を奏することと並んで、そもそも本件発明の構成が拒絶査定の理由とされた引用文献からは想到容易でない旨も強く主張しており、上記の格別の効果の説明は、拒絶査定において、本件発明の構成が引用文献から想到容易であるとされたことに加えて、格別の効果も認められないとされたことへの反論のためにされたものであると認められる。そうすると、・・・・本件発明の構成が公知技術から想到容易であるとは認められない以上、原告による上記の格別の効果の説明によって進歩性を獲得したものではないから、原告の上記説明によって本件発明を限定して解釈することは相当でなく、原告の本件出願の経過における主張によって・・・・左右されないし、原告の本件訴訟における主張が信義則に反するともいえない」、「構成要件Aの『気泡状の二酸化炭素を含有する』とは、文字通り、本件発明の組成物が気泡状の二酸化炭素を含有しているという意味と解するのが相当であり、被告が主張するような限定をすべきものと解することはできない」と述べている。 |