知財高裁(平成30年3月5日)“医療用軟質容器事件”は、「引用発明1は、袋口の内側に密封チャックが設置されたチャック式密封袋に関するものであるところ、引用例1に、引用発明1のチャック式密封袋の用途や機能に関する記載は認められない。そうすると、当業者は、引用発明1に接したとしても、それをどのような用途に用いるか、どのような機能を追加するかについて、何ら示唆されるところがなく、引用発明1に別の用途や機能に係る構成を組み合わせようとすることはないというべきである。なお、引用例1には、引用発明1について『良好な応用の前途を有している』との記載はある・・・・。しかし、『良好な応用の前途を有している』との記載をもって、当業者は引用発明1が様々な分野において応用可能であると理解できたとしても、どのような分野に応用するかについての動機付けがなければ、引用発明1に別の構成を組み合わせようとするとはいえない。そして、引用例1には、引用発明1のチャック式密封袋の用途や機能を更に特定する記載はなく、本件発明1に到達するための課題は何ら示唆されていない」、「引用発明1は、チャック式密封袋という広範な技術分野に関する袋であるのに対し、周知技術Aは、収容した液状物を患者に投与するという医療の技術分野に限定された袋に関するものであって、技術分野の関連性が強いとはいえない。さらに、引用発明1のチャック式密封袋において、収容物は上部に設けられた袋口を介して取り出される・・・・。これに対し、周知技術Aの袋において、液状物は排出用ポートから取り出されることは、周知技術Aの構成から明らかである。このように、引用発明1と周知技術Aは、作用機能が全く異なるものである。そうすると、当業者は、課題の示唆がない引用発明1に、技術分野の関連性が強いとはいえず、作用機能も全く異なる周知技術Aを組み合わせようとする動機付けはない」、「したがって、引用発明1に接した当業者は、そもそも、引用発明1に別の用途や構成に係る構成を組み合わせようとする動機付けはなく、また、引用発明1に周知技術Aを組み合わせようとする動機付けもないから、引用発明1に、周知技術Aを適用することにより、相違点2ないし4に係る本件発明1の構成を、当業者が容易に想到し得たということはできない」と述べている。 |