知財高裁(平成30年4月10日)“断熱構造事件”は、「甲2技術は、・・・・建築物の壁体の断熱材として、吹き付け施工して用いることができるウレタンフォーム断熱材・・・・に関するものである。他方、甲1発明2は、防耐火構造の認定内容を示す甲1に『アキレス充てん断熱工法』という名称(商品名)が記載されていることからすると、硬質ウレタンフォームを用いた断熱構造であって、防火構造基準を満たすことを意図したものであることが明らかである。ところで、断熱材自体の難燃性等の性能は、建築物における防火構造としては特段の意味を有するものではない。このことは、原告自身も認めているところである。そうすると、甲1発明2の硬質ウレタンフォーム断熱材を甲2技術の断熱材に置き換えることは、建築物の壁体に対し吹き付け施工できるウレタンフォーム断熱材として、共通の目的及び用途に用いる吹付け硬質ウレタンフォーム断熱材を採用したにすぎず、このようなことは、当業者であれば容易になし得ることといえる」、「原告は、甲1発明2に甲2技術を適用する動機付けがないとして、技術分野や課題の共通性が認められないこと、阻害要因が存在することなどを主張する。しかしながら、原告が主張するとおり、ウレタンフォーム断熱材の難燃性が、防火構造に影響を与えるものではないとしても、前記のとおり、甲1発明2の硬質ウレタンフォーム断熱材と甲2技術とは、建築物の壁体に対し吹き付け施工できるウレタンフォーム断熱材として、共通の目的及び用途に用いるものであるから、甲2技術を採用する動機付けは十分存するものというべきである。また、現場で断熱構造の施工をする者があえて認定外となるような改変を行わないことは当然であるとしても、防火構造等の建築の設計等に携わる当業者は、防火構造の認定にかかわらず、常に、新たな課題に対処すべく、建築構造等の改善をしようと試みる意識を有するものであるから、甲1が防火認定に係る文献であることそれ自体は、阻害要因になるものとはいえない」と述べている。 |