東京地裁(平成30年4月11日)“ウォームギヤの転造加工方法事件”は、「段落【0071】に『この後退は、素材Mの弾性変形分と転造機の機械系の弾性変形分を解放して、第1転造ダイス・・・・、及び第2転造ダイス・・・・と素材Mとを接触をさせないための後退動作である・・・・』と記載されており、『後退』の技術的意義に関するものと考えられるような記載はこれら以外に見当たらない」、「そうすると、本件明細書の記載によれば、構成要件Iの『後退』は、転造の押し付け圧力を除くものであり、それは素材及び機械系の弾性変形を解放してダイスと素材とを接触させないための動作であると理解することができる」、「したがって、構成要件Iの『後退させて待避』は、ダイスの後退時にダイスと素材とが接触しない状態になることを意味すると解すべきであり、ダイスと素材の接触が維持される構成は含まれないものと解するのが相当である」、「これに対し、原告は、構成要件Iの『後退させて待避』は、ダイスの後退時にダイスと素材の接触が維持される構成を排するものではない旨主張し、その理由として、・・・・本件発明の発明者に、『非接触』が構成要件になるという認識はなく、『非接触』はウォームギヤの転造を実現する上で技術的なポイントでないこと、・・・・本件明細書の段落【0071】の上記記載が『実施例として』記載されているにすぎないこと・・・・などを挙げる」、「原告の主張は、本件特許請求の範囲の解釈に関する発明者の主観的な認識をいうにとどまっており、本件特許の出願当時の技術常識に基づき、ダイス後退時に素材と非接触になることがウォームギヤの転造を実現する上で技術的なポイントでないことを主張立証するものでもないから、『後退させて待避』の解釈を基礎付ける事情として採用することはできない」、「原告は、・・・・上記の段落【0071】の記載が『実施例』として記載されているにすぎない・・・・ことをも主張するが、本件明細書の発明の詳細な説明において、『後退』の技術的意義に関するものと考えられるような記載は上記の段落・・・・の記載以外に見当たらないことは上記のとおりであるから、『後退させて待避』の意味内容を解釈するに当たって、それらの記載が考慮されるのは当然である」と述べている。 |