知財高裁(平成0年4)“平底幅広浚渫用グラブバケット事件再度の審判手続において、審判官は、前訴判決が認定判断した同一の主引用例(引用例1又は2)をもって本件発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたか否かにつき、前訴判決とは別異の事実を認定して異なる判断を加えることは、取消判決の拘束力により許されないのであるから、本件発明は当業者が引用例1又は2から容易に発明することができたとはいえないとした本件審決は、確定した前訴判決の拘束力に従ったものであり、適法である。そして、再度の審決取消訴訟たる本件訴訟において、取消判決の拘束力に従ってされた本件審決の認定判断を誤りであるとして、これを裏付けるための新たな立証として甲114ないし118を提出し、更には裁判所がこれを採用して、取消判決の拘束力に従ってされた本件審決を違法とすることも許されないというべきである。発明の容易想到性については、主引用発明に副引用発明を適用して本件発明に至る動機付けがあるかどうかを判断するとともに、適用を阻害する要因の有無、予測できない顕著な効果の有無等を併せ考慮して判断することとなるところ、原告は、第3次審決に係る審判手続及びその審決取消訴訟において、引用例1又は2に基づく容易想到性を肯定する事実の主張立証を行うことができたものである。これを主張立証することなく前訴判決を確定させた後、再び開始された本件審判手続及びその審決取消訴訟である本件訴訟に至って、原告に、前訴と同一の引用例である引用例1及び2から、前訴と同一の本件発明を、当業者が容易に発明することができたとの主張立証を許すことは、特許庁と裁判所の間で事件が際限なく往復することになりかねず、訴訟経済に反するもので、行政事件訴訟法3条1項の規定の趣旨に照らし、許されない」と述べている。

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