知財高裁(平成30年6月19日)“光配向用偏光光照射装置事件”は、「参考資料3発明と甲5発明は、配向膜を形成しようとする基板を載置したステージを移動させて、当該基板に偏光光を照射する光配向用偏光光照射装置である点で共通の技術分野に属する。また、その光源である偏光光照射装置が複数の偏光子を並べた光照射部を備えているという構成の点でも共通する。そして、甲5発明は、複数の偏光子を並べた光照射部を備える偏光装置では、各偏光子から同じ偏光方向を有する偏光光が出射される保証がなく、偏光子ホルダの熱膨張や、装置内外からの振動などにより偏光子の保持位置にずれが生じ得るところ、『偏光方向を変化させるような回転ずれは、製造する液晶表示装置の画像品質において問題となる。具体的には、一部の石英基板からの照射光の偏光方向に回転ずれが生じた場合、その部分では表示する画像がムラとして現れることとなる』・・・・との課題を解決するものである。そうすると、同様に複数の偏光素子をフレーム内に並べて配置して構成した光照射部を備えている参考資料3発明も・・・・、上記と同じ課題を内在しているというべきである。また、液晶パネルは、所定の配向方向が付与された2枚の配向膜で液晶分子を挟み、これを更に偏光板で挟んで平板状の部材とし、電場の作用により当該液晶分子の方向を適宜変化させ、偏光光を透過させたり、又は透過させないこととして画像を表示させるものであるから・・・・、各配向膜に付与された配向方向にずれが生じると、その表示性能が低下することになる。そして、参考資料3発明は、配向膜に偏光光を照射して配向性を付与するための光配向用偏光光照射装置であるから、当該配向膜が組み込まれることとなる液晶パネルの表示性能の低下を防止するために、配向膜を形成する基板に照射する偏光光の偏光方向と当該基板の向きとのずれをできるだけ小さくすることは当然の技術課題である。このことは、甲5において、『基板に対して走査させる紫外線の偏光方向を事前に確認することが可能となる』・・・・、『設計段階で予め基板9に対して設定されている偏光方向からのずれによって異常を判定する形態である』・・・・など、基板に対する偏光光の偏光方向を事前に確認することの必要性を示唆する記載や、基板に対する偏光光の偏光方向が一定の範囲を逸脱する場合には異常と判定するとの記載によっても裏付けられているといえる。以上によれば、参考資料3発明に接した当業者においては、上記の内在する課題及び当然の技術課題を参考資料3発明における課題として認識し、この観点から、技術分野及び構成において共通点を有する甲5発明の適用を検討する動機付けがあるというべきである」と述べている。 |