知財高裁(平成0年8)“情報提供プログラム事件引用発明1はコンピュータ上の対話型処理を行うシステムである。また、当業者は、本願出願日時点において、コンピュータ上の対話型処理システムである引用発明1には、コンピュータによる対話型処理の『円滑化を図る』という周知の課題があることを理解し、引用発明1の通信端末に、キャラクタが動いているような表示をするとの周知の解決手段の適用を試みるということができる。一方、引用発明2はコンピュータ上の対話型処理を行うナビゲーション装置である・・・・。また、引用発明2は、表示装置にエージェントを表示し、回答時に当該エージェントの口が開くというものであるから、当業者は、かかる構成を、コンピュータによる対話型処理の『円滑化を図る』という周知の課題を解決するための、周知の解決手段の1つ、すなわち通信端末にキャラクタが動いているような表示をする構成の1つであると理解する。そうすると、引用発明1に上記周知の課題があることを認識し、これに上記周知の解決手段の適用を試みる当業者は、同じ技術分野に属し、かかる課題を解決する手段である引用発明2を、引用発明1に適用することを動機付けられるというべきである」、「原告は、周知の課題として『メディアコミュニケーションの円滑化を図る』などと認定することは、課題を殊更に上位概念化するものであると主張する。しかし、引用発明1及び2は、いずれもコンピュータ上の対話型処理システムの技術分野に関するものである。そして、このような技術分野に関する・・・・各文献には『ユーザが自然に計算機へ音声入力できる雰囲気』・・・『反応のない機械に対して発話するために間が掴み辛い』・・・『ユーザと電子機器とがコミュニケーションを取り易い環境を構築』・・・『人間を相手にしているかのような自然なコミュニケーションを通じた情報入力』・・・『より自然な対話を実現』・・・・などと、コンピュータ上の対話型処理システムにおいて、対話型処理の『円滑化を図る』必要性が複数指摘されている。したがって、本願出願日時点において、コンピュータによる対話型処理の『円滑化を図る』ことは、周知の課題であったと認定することができ、これは課題を殊更に上位概念化するものということはできない」と述べている。

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