知財高裁(平成0年9)“LRP6を調整するための分子事件本件明細書には、本件発明に係る特異性を満たすエピトープとなり得ると予想される特定の塩基配列の具体的な選定方法について何ら記載がないから、本件明細書に基づいて本件発明のLRP6結合分子を得ようとする当業者は、結局、発明者が本件発明を発明した際に行ったのと同程度の試行錯誤をしなければならないところ、これは当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を強いるものというべきである。すなわち、エピトープを特定すれば、それに対応する抗体は周知の手法により得ることができるとはいえるものの、本件明細書には、そのエピトープについて、具体的なアミノ酸配列等のその構造に関する技術的特徴が実施例として開示されておらず、また、本件明細書における他の記載及び出願時の技術常識に基づいても、エピトープ又はそれに対応する抗体結合部分の具体的構造等を特定することができない以上、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて本件発明に係る結合分子を容易に生産することができるとはいえない」、「本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明・・・・について、当業者が容易に実施することができるように明確かつ十分に記載したものと認めることはできない」と述べている。

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