知財高裁(平成0年9)“LRP6を調整するための分子事件医薬に関する発明については、一般に、物質名や成分組成等が示されることのみによっては、その有用性及びそのための当該医薬の有効量を予測することは困難であり、当該医薬を使用することができないから、実施可能要件に適合するものといえるためには、明細書の発明の詳細な説明が、その医薬を生産することができるだけでなく、出願時の技術常識に照らし、医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載されている必要があるというべきである」、「本件についてみると、本件明細書・・・・には、医薬組成物に関する一般的な製剤化技術や投与方法とともに、癌や骨関節症、糖尿病など『LRP6結合分子』が関連する可能性がある多くtシグナル伝達関連障害が列挙されている。しかし、本件明細書には、本件発明・・・・に係る医薬組成物が新規有効成分とするところの『LRP6結合分子』を用いた薬理試験結果など、医薬としての具体的な有用性を当業者が理解し得るような記載がされていない。そうすると、当業者は、本件発明に係る特定の『LRP6結合分子』がいかなる疾患の治療に有効であるかを具体的に理解することができないというべきである。したがって、本件発明・・・・について、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件に適合するものとはいえない」と述べている。

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