知財高裁(平成0年9)“キノコ発酵エキス事件引用発明の製造方法と引用例2記載の発酵及び培養方法は、微生物を用いて食用素材を発酵させる発酵技術である点で技術分野が同一であり、また、引用発明の製造方法は免疫賦活作用、抗がん作用などの生理活性成分を付加及び増強することを目的の1つとし、引用例2記載の発酵及び培養方法は免疫賦活物質を効率よく得ることを目的とするものであるから、両者は、免疫賦活物質の生産を目的とする点で課題が共通する。加えて、引用例2には、タンパク質、糖類が含まれていることがよく知られている穀物、海草、豆類の食用植物に由来する素材は、パントエア・アグロメランスを用いる発酵及び培養に適応できることの記載があること・・・・、引用例3には、キノコが糖質又は蛋白質が豊富な食品材料であることの記載があること・・・・に照らすと、引用例1ないし3に接した当業者においては、糖質又は蛋白質(タンパク質)が豊富な食品材料であるキノコは、穀物、海草、豆類の食用植物に由来する素材と同様に、引用例2記載のパントエア・アグロメランスを用いる発酵及び培養に適応し得るものと理解し、引用発明において、免疫賦活物質の生産をより向上させるために『麹菌、乳酸菌および酵母の群から選択された一種または複数種』を用いて発酵させる構成に代えて、パントエア・アグロメランスを用いて発酵させる構成(相違点に係る本願発明の構成)とする動機付けがあるものと認められるから、引用例1ないし3に基づいて、相違点に係る本願発明の構成を容易に想到することができたものと認められる」と述べている。

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