知財高裁(平成1年11日)“スプレー缶用吸収体事件4の1には、スプレー缶を倒立状態で使用した場合や缶を倒立状態で保管する場合に液漏れの原因となり、可燃性液化ガスの液漏れにより火炎が発生するおそれがあるため、吸収性能・保液性に優れた吸収体を提供することが課題であること・・・・の記載がある。一方で、乙4の2には、乙4の2記載の『連続気泡状パッキング』は、缶体を逆さまにして使用しても不燃性液体がバルブ側の空間に漏れて液体のまま噴出することを防止するためのものであることの記載がある・・・・。そうすると、乙4の1及び乙4の2に接した当業者は、乙4の1の第1発明において、スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にするために、乙4の1の第1発明に乙4の2記載の『連続気泡状パッキング』の構成を適用する動機付けがあるものと認められる。また、乙4の1の『具体的には、スプレー缶形状に合わせて、その内径に適した大きさの円筒状の成形体とすると、充填が容易にできる上、使用中も安定してスプレー缶内に保持することができる・・・・との記載から、スプレー缶の使用中に吸収体を安定して保持する必要性があることを理解できる。以上によれば、当業者は、スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にし、吸収体を安定して保持するために、乙4の1の第1発明において、乙4の2の連続気泡状パッキングを適用する際に、乙4の2記載の連続気泡状パッキングの構成のものを吸収体の表面に密接に配置し、相違点2に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものと認められる」と述べている。

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