知財高裁(平成31年2月6日)“美容器事件”は、「引用発明1は、マッサージローラで怪我の危険を生じさせずに、突起した身体部分に可能な限り近くに達することができるように形成することを課題とし、マッサージローラが柔軟に変形する中空ローラとして形成されること、軸上の一方の側に片持ちで支持されること、及びマッサージローラがグリップの反対側で軸から突出することをその課題解決手段とする。このため、マッサージローラ4が柔軟性を有する弾性部材からなることと、中空ローラとして形成されることとの両方が、マッサージローラ4の先端部における柔軟性を確保し、怪我の危険を生じさせないようにするために不可欠の構成といえる。相違点3は、本件発明1の『回転体』、引用発明1の『マッサージローラ』が非貫通状態であるか否かに関するものであるところ、引用発明1のマッサージローラ4を非貫通状態、すなわち、先端部において閉じた形態のものとすることは、先端がマッサージローラと同じ弾性部材又は他の部材により閉塞されることを意味する。この場合、マッサージローラが中空、すなわち回転体が貫通状態のものに比べて、その先端部における柔軟性が損なわれることは明らかである。そうすると、回転体を非貫通状態とした美容器(サイト注:甲4’技術及び甲5’技術)が技術常識として存在したとしても、先端が柔軟に変形する中空ローラであることに技術的意義を有する引用発明1のマッサージローラ4に、これを非貫通状態とする技術常識を適用する動機付けがあるということはできず、むしろ、このような改変には阻害要因があるというべきである」、「以上より、甲4又は5記載の技術につき、仮に原告主張に係る甲4’技術及び甲5’技術のとおり理解したとしても、これらを引用発明1に適用することにより相違点3に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない」と述べている。 |