知財高裁(平成31年2月6日)“携帯用グリップ事件”は、「原告は、原告が主張したにもかかわらず、審判合議体が、引用発明に周知技術を適用するに当たっての阻害要因を検討しなかったことが、違法である旨主張する。発明の進歩性については、引用発明に周知技術を適用する動機付けのみならず、適用を阻害する要因の有無、予測できない顕著な効果の有無等を併せ考慮して判断すべきである。原告は阻害要因があることを基礎付ける事実を主張しているのであるから・・・・、阻害要因の有無について審決書に具体的に説示しなかった本件審決は、特許法157条2項4号の要求する理由が十分に記載されていないものとして、違法なものといわざるを得ない。しかし、同号が審決書に理由を記載すべき旨定めている趣旨は、審判官の判断の慎重、合理性を担保しその恣意を抑制して審決の公正を保障すること、当事者が審決に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与えること及び審決の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にすることにあることに照らせば、かかる手続違反のみをもって、実体と無関係に本件審決を取り消すべきものということはできないところ、・・・・引用発明に周知技術1ないし3を適用することにつき阻害要因があるということはできない。したがって、前記違法は結論に影響を及ぼすものではなく、これをもって、本件審決を取り消すべきものということはできない」と述べている。 |