知財高裁(平成31年2月6日)“経皮吸収製剤事件”は、「本件訂正事項12は、本件明細書の【0003】に『皮内』とあるのを『皮膚内』と訂正するものであるところ、当該記載箇所は、背景技術としてマイクロニードル、特に自己溶解型マイクロニードルを『皮膚』に挿入する場合について説明するものであることが、その文脈からして明らかである。このことに、【0003】の他の箇所では、全て『皮膚』という用語が用いられていることを併せ考えれば、訂正箇所である『皮内』は、『皮膚』の『膚』を脱落させたものであって、正しくは『皮膚内』と記載されるべきものであったと理解するのが相当であるから、本件訂正事項12は、誤記の訂正として訂正要件を満たすものというべきである」、「そうすると、本件訂正事項12に係る訂正を認めた本件審決は、結論において相当であり(サイト注:本件審決は不明瞭な記載の釈明として訂正を認めた)、適法というべきである」、「本件訂正事項16は、本件明細書の【0077】に、『皮膚の表面や真皮』とあるのを、『皮膚の表皮や真皮』に訂正するものである。当該記載箇所は、吸収促進剤としての界面活性剤に関連して、目的物質の皮膚における溶解性について説明するものであるところ、そもそも、本件発明は、基剤と目的物質とを有し、表皮及び真皮から成る皮膚に挿入して使用する経皮吸収製剤であるから、目的物質の溶解性が問題になるのは、『皮膚の表面や真皮』ではなく、『皮膚の表皮や真皮』であることが明らかである。このことに、【0077】に対応するものというべき【0030】においては、『皮膚の表皮又は真皮』という用語が用いられていること(原告は、段落【0077】と【0030】とでは、意識的に異なる用語が用いられていると主張するが、そのような理解は不自然であり採用し難い。)を併せ考えると、訂正箇所である『表面』は『表皮』と記載すべきところを誤って『表面』と記載したものと理解するのが相当であるから、本件訂正事項16は、誤記の訂正として訂正要件を満たすものというべきである。そうすると、本件訂正事項16に係る訂正を認めた本件審決は、結論において相当であり(サイト注:本件審決は不明瞭な記載の釈明として訂正を認めた)、適法というべきである」と述べている。 |