知財高裁(平成31年3月14日)は、「控訴人は、自国語である日本語を選択できる状況下において外国語を選択している内国民と、日本語を選択する余地のない外国民とでは、内国民待遇の原則を適用する前提が異なること、日本語特許出願の出願人が国内書面提出期間内に国内書面を提出しなかった場合には、法184条の5第2項1号に基づく補正命令が発せられるなどの救済が行われるのに対し、外国語特許出願の出願人が不注意により国内書面の提出期間を徒過した場合、補正命令を受けることなく、国内書面の却下処分を受けることになるというのは不合理であることからすると、外国語特許出願の出願人が国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出しなかった場合、同号による補正の機会を与えずに国内書面が却下されることは、パリ条約2条の定める内国民待遇の原則(内外国人平等の原則)に反するものであって、補正命令を発することなくされた本件却下処分は違法であるから、これを否定した原判決の判断は誤りである旨主張する。しかしながら、・・・・法184条の4第3項が国内書面提出期間(同条第1項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)内に明細書等翻訳文の提出がなかったときに当該国際特許出願が取り下げられたものとみなされる旨を定めているのは、特許協力条約24条(1)(B)が、出願人が翻訳文の提出を所定の期間内にしなかった場合、国際出願の効果が当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅する旨を定めていることに基づくものである。一方で、同条(2)は、同条(1)の規定にかかわらず、指定官庁は国際出願の効果を維持できる旨を定めているが、これは、翻訳文の提出が所定の期間内にされなかった場合の国際出願の効果について、同条(1)(B)又は(2)のいずれを採用するかを指定国に委ねる趣旨のものと解するのが相当であるから、同条(1)(B)を採用した法184条の4第3項の規定は、同条約に反するものではない。また、・・・・国内書面提出期間内に明細書等翻訳文が提出されなかった場合に取下げが擬制される同項の規定及び国内書面提出期間内に国内書面が提出されなかった場合の補正命令に関する法184条の5第2項の規定は、外国語特許出願の出願人が内国民であるか外国民であるかを問わず適用されるものであるから、これらの規定はパリ条約2条の定める内国民待遇の原則に反するものではない。そして、本件においては、国内書面提出期間内に明細書等翻訳文が提出されなかったため、法184条の4第3項の規定により、本件国際特許出願が取り下げられたものとみなされた結果、国内書面の提出に係る法184条の5第2項1号の補正命令を発する余地はなかったものであるから、補正命令を発することなくされた本件却下処分は適法である。したがって、控訴人の上記主張は採用することができない」と述べている。 |