知財高裁(平成1年3日)“液晶表示デバイス事件本件訂正発明におけるメソゲン化合物a、a1、a2を定義する式Iないしは、請求項によってその具体的内容を多少異にするものの、いずれも当該式を構成する重合性基P、スペーサー基p、結合基X、メソゲン基MG、末端基Rといった基本骨格部分において非常に多くの化合物を含む表現である上、これらに結合する置換基の選択肢も考慮すれば、その組合せによって膨大な数の化合物を表現し得るものとなっている。このような場合に、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するためには、発明の詳細な説明は、上記式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該式が示す範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である。換言すれば、発明の詳細な説明に、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に、具体例を開示せず、特許出願時の当業者の技術常識を参酌しても、特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合、サポート要件に適合するとはいえない」と述べている。

特許法の世界|判例集