東京地裁(平成31年3月20日)“梁補強金具事件”は、「原告は、被告各製品の競合品である原告各製品を販売しているところ、被告が平成28年10月から平成30年10月10日頃までの間に、被告各製品を販売したことにより受けた利益の額は、142万0314円である・・・・から、被告の侵害行為により原告が受けた損害の額は、同額と推定される(特許法102条2項)」、「被告は、上記推定の覆滅事由として、本件各発明及び本件各訂正発明(以下『本件各発明等』という。)は基本発明ではなく、従来技術の一部分の改良発明であり、その特徴部分は実質的には『つば状の出っ張り部の外周部』のみであるから、@被告各製品全体における上記部分の材料費比が3分の1程度と考えられること、A構成要件1−C等に特有の効果は『軸方向の位置決めを正確かつ迅速に行うことができる』という効果にとどまり、B同効果は、被告各製品の宣伝広告において、需要者に何ら積極的に訴求されていないこと、C他方、『つば状の出っ張り部の外周部』のみを溶接固定する被告各製品は、『[梁の反転が不要]となり施工性が大幅にアップ』するという、原告各製品の有しない特有の顕著な効果を有していることからすれば、上記推定は、少なくとも70%の割合で覆滅されるべきであると主張する。しかし、本件各発明等は、フランジ部を含むリング状の梁補強金具全体に関するものであって、フランジ部のみが梁補強金具と別個独立の部分を構成し、固有の機能や作用効果を奏するものではないので、フランジ部のみを取り出して、製品全体に占める同部分の材料費に応じて覆滅の割合を定めることは相当ではない。また、被告は、本件各発明等のフランジ部の効果が限定的で、被告各製品において需要者に積極的に訴求されていないと主張するが、被告各製品は前記のとおりフランジ部を有するので、本件各発明等と同様の効果を享受しているほか、被告のウェブサイト・・・・や被告各製品のカタログ・・・・においても、被告各製品のフランジ状の部分が図示されるなどしている・・・・。さらに、被告のウェブサイトや被告各製品のカタログには、被告各製品の特長として、鉄骨梁ウェブ開口に被告各製品をはめ込み、片面(つば状の出っ張り部の外周部)のみを全周溶接することにより、取付けの際に梁の回転が不要となり施工性が大幅にアップするという点が挙げられているが、このような施工が可能となるのも、梁補強金具にフランジ部に該当するつば状の出っ張り部を設けたからであると考えられる。そうすると、被告各製品の特長的な点は本件各発明等の構成に由来するものであると考えられる。以上によれば、本件においては、損害額の推定を覆滅すべき事情があるとは認められない」と述べている。 |