知財高裁(平成31年4月12日)“トイレットロールの芯事件”は、「引用発明及び周知技術は、いずれもトイレットロールに関するものであるから技術分野が関連する。また、引用発明は『ペーパーホルダーにそう入する際に簡単に上下の判別ができ得る』ことを課題とするものである。一方、周知例1は『ペーパーの引き出し方向が視認できるように』する技術、周知例2は『回転方向やテール端部端縁側の自由部分の位置を視認しやすく』する技術、周知例3は『トイレットロールの巻方向や上下方向が判るように』する技術である。したがって、引用発明と周知技術の課題は共通する。さらに、引用発明の『印M』は、・・・・トイレットロールをホルダーに取り付けた場合における引き出し向きが上下いずれになるかについて、相関関係を示す限度ではあるものの、『上下の判別ができ得るように』入れられたものである。一方、周知技術の『印(識別子)』は、ペーパーの引き出し向きを示すものである。したがって、引用発明の『印M』及び周知技術の『印(識別子)』の作用・機能は共通する」、「よって、当業者は、『ペーパーホルダーにそう入する際に簡単に上下の判別ができ得るように』、引用発明の識別子(印M)を適宜設計変更するに当たり、周知技術を前提とすれば、相違点に係る構成を採用することを動機付けられるというべきである」、「原告は、引用発明から引き出し向きを判別できるとすれば、引用発明はそのままで十分に機能し、それ以上の改良をしようとする動機は生じない旨主張する。しかし、引用発明は、トイレットロールをホルダーに取り付けた場合における引き出し向きが上下いずれになるかについて、『印M』との相関関係から確定できるというものである。『ペーパーホルダーにそう入する際に簡単に上下の判別ができ得る』ようにするという引用発明の課題の解決に当たり、引き出し向きが上下いずれになるかについて、客観的に確定できるような構成へと改良しようとする動機が生じることは否定されるものではない。そもそも、引用発明が十分に機能することをもって、当業者には引用発明を改良しようとする動機が生じないといえるものでもない。したがって、引用発明を改良する動機が生じないとする原告の主張は、採用できない」、「以上によれば、当業者は引用発明に基づき本願発明を容易に発明をすることができたということができる」と述べている。 |