東京地裁(令和元年)“スクラブ石けんの製造方法事件構成要件1Bは『界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬して、中空内部にアルカリ溶液を浸透させ、』というものである」、「構成要件1Bの文言は、その通常の意義に照らすと、シラスバルーンを『界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬』することにより、その『中空内部にアルカリ溶液を浸透』した状態にすることを意味すると解するのが自然である」、「本件明細書等1の段落0030には、実施例として『界面活性剤を含有するアルカリ溶液』と『シラスバルーン』を混合する方法(サイト注:シラスバルーンの投入時の溶液はアルカリ溶液である)が記載されているが、同明細書等の段落0033には『この際、アルカリ溶液には、界面活性剤を添加しているため、アルカリ溶液の表面張力が弱められて、シラスバルーン表面の微細なクラックからシラスバルーンの内部へ、アルカリ溶液を容易に浸入させることができる』との記載がある。これによれば、本件発明1において、アルカリ溶液がシラスバルーンの内部に容易に浸入することができるのは、アルカリ溶液に界面活性剤を添加するからであると考えられ、シラスバルーンの投入時点でアルカリ溶液であるか、あるいは、シラスバルーンの投入後に水溶液にアルカリ剤を添加するかにより、その効果は左右されないというべきである。そうすると、段落0030に記載された方法は1つの実施例にすぎないというべきであり、構成要件1Bの意義をかかる方法に限定することは相当ではない」、「被告方法は、乳化釜に@精製水及び界面活性剤・・・・等を投入し、Aシラスバルーン・・・・を添加し、Bアルカリ剤・・・・を添加し、C攪拌した上、D脂肪酸・・・・を投入してけん化する工程を含むことが認められる・・・・。被告方法においては、シラスバルーンを添加する時点(上記A)では溶液にはアルカリ剤が添加されていないため『アルカリ溶液』ではないが、その次の上記Bの工程でアルカリ剤が添加され、攪拌されることでアルカリ溶液となるから、上記Cの工程が終了した時点で、シラスバルーンは『界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬』された状態となるということができる。そして、被告製品を分析した甲9報告書におけるICP発光分析の結果・・・・及び甲0報告書における元素分析の結果・・・・によれば、被告製品に含まれるシラスバルーン内にアルカリ剤由来のカリウム(K)が存在することが認められるから、シラスバルーンの『中空内部にアルカリ溶液が浸透』しているといえる」、したがって、被告方法は、構成要件1Bを充足する」と述べている。

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