知財高裁(令和元年)“電解コンデンサ用タブ端子事件訂正事項A−bは、ゼロクロス時間の上限値を2.0秒と特定するのみで下限値を特定していないところ、これは、ゼロクロス時間を0秒以上2.0秒の範囲と特定して特許請求の範囲に限定を付加する訂正であるということができる」、「本件明細書には、・・・・ゼロクロス時間が0秒以上2.0秒以下の範囲に該当するものとして、ゼロクロス時間が2.0秒、2.5秒及び2.0秒のタブ端子(実施例1、2、4、5)が明示的に記載されているということができるが、ゼロクロス時間が0秒以上2.0秒未満であるタブ端子についての明示的な記載はない。そして、本件明細書の記載からは、ウィスカの成長抑制処理として熱処理を行った場合について、・・・・熱処理温度とゼロクロス時間との間に単調な相関関係があるとは認められず、実際に測定された各温度以外の熱処理温度においてどのようなゼロクロス時間をとるのかを予測することは困難である。また、ウィスカの成長抑制処理として溶剤処理を行った場合について、実施例4及び5・・・・の記載から、ゼロクロス時間が2.0秒未満となる具体的な溶剤処理を推測することはできない。このように、本件明細書の記載から、ゼロクロス時間を2.0秒未満とした上でウィスカの発生を抑制することが自明であるということはできない」、「以上のとおりであるから、訂正事項A−bは、明細書等に明示的に記載されていないし、その記載から自明であるともいえないから、訂正事項A−bに係る訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであるということはできず『願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面・・・・に記載した事項の範囲内において』するものとはいえない」、「原告は、訂正事項A−bは、ゼロクロス時間が2.0秒を超える態様を除くものに過ぎず、本件訂正の前後を通じ、ゼロクロス時間が2.0秒未満となる態様についての侵害の成否の結論は異ならないと主張するが、特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合であっても、付加される訂正事項が明細書等に明示的に記載されている場合や、その記載から自明である事項である場合でなければ、当該訂正が新たな技術的事項を導入するものとなるのは、前記・・・・に説示したとおりであり、原告の主張は採用できない」と述べている。

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