知財高裁(令和元年11月11日)“電解コンデンサ用タブ端子事件”は、「本件発明7(サイト注:請求項7に記載された発明)は、『前記溶剤処理が、リード線端部にアルミ芯線を溶接した直後に行われるものである、請求項6に記載のタブ端子。』として、請求項6の『前記の酸化スズ形成処理が、溶剤処理により行われる、請求項1または2に記載のタブ端子。』を引用するものであり、『酸化スズ形成処理が溶剤処理により行われる』との記載は製造方法であるから、特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合に当たる。そうすると、本件発明7について明確性要件に適合するというためには、出願時において本件発明7の『タブ端子』を、その構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在することを要するところ、原告はかかる事情について、具体的な主張立証をしない」、「原告は、本件明細書の記載・・・・から、ウィスカ発生の抑制を目的とした酸化スズが形成されているというタブ端子の溶接部分の構造ないし特性を示す目的で『溶剤処理』という用語を用いていることが読み取れるとして、製造方法が物のどのような構造又は特性を表しているのかは、本件発明の記載及び本件明細書の記載から極めて明白であり、上記・・・・の不可能又は非実際的事情について検討するまでもなく、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確といえないから、明確性要件に適合すると主張する。しかし、本件明細書には、・・・・請求項6に係る『溶剤処理』により酸化スズ形成処理が施されたタブ端子についての記載があるものの、・・・・溶剤処理により形成された酸化スズが、それぞれどのような構造又は特性を有するものであるのかについての記載はない。そうすると、本件明細書の記載から、本件発明7の引用する請求項6に係る溶剤処理により形成された酸化スズがどのような構造又は特性を有するかが明らかであるとはいえないし、また、それが技術常識から明らかであるとみるべき証拠もない。したがって、原告の主張は採用できない」と述べている。 |