東京地裁(令和元年12月12日)“ループパイル保持体事件”は、「本件各特許権の第4年分の特許料の納付の遅れが生じた直接の原因は、原告において、平成20年7月頃に特許料の支払の管理の大部分を本件特許事務所からデンネマイヤーに移管したことを契機として、本件各特許権を含め、移管後成立権利についての第4年分以降の特許料の管理について、原告は本件特許事務所が管理すると考え、本件特許事務所はデンネマイヤーが管理すると考えるという認識のそごが生じ、これらの特許料の支払が、原告からも本件特許事務所からもなされない状態が長期間継続したことによるものであったといえる。そして、この認識のそごに関し、原告の担当者であったBは、本件各特許権を含めた移管後成立権利の取扱いについて、デンネマイヤーに移管すべきか、本件特許事務所において管理を継続すべきかについて判断に迷い、平成20年7月頃にデンネマイヤーへの当初の移管(サイト注:移管前成立権利の管理の移管)の手続が終了した後に、本件特許事務所から、この点についての確認を受けた際にも『少し待って下さい』と言って明確な返答をせず、その後も、移管の当否の判断がつかない状態が続いたため、平成27年10月頃に移管後成立権利が消滅しているのを発見するまで、移管後成立権利の管理について本件特許事務所との間で具体的な連絡をすることはなかった旨を述べているものであるから・・・・、原告において、本件各特許権の特許料の支払に関し、原特許権者として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときに当たるということはできない」、「原告は、デンネマイヤーへの移管後の原告と本件特許事務所との間のやりとりからすれば、移管後成立権利について、原告への連絡なく管理を終了させたことについては、本件特許事務所に帰責性があった旨主張する。しかしながら、上記のとおり、本件特許事務所からの移管後成立権利の取扱いについての問合せに対して、Bが『少し待って下さい』と述べていたことを前提にすれば、原告からの連絡がない状況で、当然に本件特許事務所が移管後成立権利の管理を行うべきであったとはいえない。また、本件特許事務所は、平成20年7月以降もデンネマイヤーに移管されなかった(サイト注:共有に係る特許権についてはデンネマイヤーから管理できないと言われた)、原告と他の特許権者とが共有する特許権については、特許料の支払の都度、原告への通知を続けていたことが認められる・・・・が、他方で、本件各特許権を含めた移管後成立権利については、登録時に納付されるべき第1年分から第3年分の特許料の支払についての連絡がされた・・・・後は特許料の支払に関する連絡がされていたとは認められないから、原告において、本件特許事務所から原告への連絡がないにもかかわらず、本件特許事務所により、相当数に上る移管後成立権利の第4年分以降の特許料の納付が継続されていたと長期間誤信したことに相当な理由があったともいえない。したがって、原告の主張する本件特許事務所の帰責性は、上記・・・・の結論を覆すに足りるものではない」、「以上によれば、本件各特許権について、追納期間内に第4年分の特許料等を納付することができなかったことについて、特許法112条の2第1項の『正当な理由』があったとは認められず、その他、この点を認めるに足りる証拠はない」と述べている。 |