東京地裁(令和元年)“分割起点形成装置事件本件特許請求の範囲の記載をみると、本件発明に係る『物』である『分割起点形成装置(構成要件A、D)は『内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハを分割するための』装置であるものであって、上記の『形成した』という記載文言からすれば、既にその内部にレーザ光で改質領域が形成されたウェーハを加工対象物として、その割断のための分割の起点を形成する装置であることが明らかである」、「そうすると、SDレーザソーに搭載される被告各製品は、あくまでその内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハを製作するためのものであり、本件発明に係る分割起点形成装置に対しては、その加工対象物を提供するという位置付けを有するものにとどまるというべきであるから、このような被告各製品をもって、同分割起点形成装置の生産に用いる物ということはできないというほかない。したがって、被告各製品は、本件発明に係る『物』の『生産に用いる物』に当たるということはできない」、「原告は、本件明細書の記載・・・・にあるように、改質領域の形成からウェーハの分割までの一連のプロセスを実行する装置が全てそろって初めて技術的に意味があるものであることからすれば、SDレーザソー(被告各製品搭載)及び研削装置は、本件発明の『分割起点形成装置』を構成するものであるといえ、被告各製品は、本件発明に係る『物』の『生産に用いる物』に当たるといえる旨主張する。しかし、原告が指摘する本件明細書の記載・・・・が、研削除去工程だけでなく被告各製品が関わるレーザ改質工程についても触れたものとなっているとしても、本件特許請求の範囲の記載は、飽くまで『内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハを分割するための(構成要件A)、『分割起点形成装置(構成要件D)というものであり、その記載文言上、既にその内部にレーザ光で改質領域が形成されたウェーハを加工対象物として、その割断のための分割の起点を形成する装置であることが、一義的に明確なものとなっているものと認められる。そうである以上、本件明細書の上記記載がレーザ改質工程についても触れたものとなっていることを指摘することによって、本件特許請求の範囲の記載文言から導いた前記認定を左右することはできないというべきである」と述べている。

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