知財高裁(令和元年)“光学情報読取装置事件2、甲3及び甲・・・によれば、本件特許の出願当時、複数の受光素子が2次元的に配列されるとともに、当該受光素子ごとに集光レンズ(マイクロレンズ)が設けられた光学的センサを用いたカメラ装置にあっては、その中心部と周辺部とにおける光の入射角の相違による周辺部の光量不足が、集光レンズを採用しないものより大きくなるという課題が存在し、その課題を解決するために、複数のレンズで構成される結合レンズに対し、絞りを被写体側に配置して中心部と周辺部との入射角の差を小さくすることにより、周辺部の光量不足を緩和することは、当業者の周知技術であったと認められる」、「上記周知技術が解決しようとした課題である周辺部の光量不足とは、撮像素子の受光素子ごとに、素子開口部より大きい口径のマイクロレンズを配設し、同レンズで集光する構成を採用したことにより生じる事象であり、用途がカメラ装置である場合に特有のものではなく、同様の光学系及び撮像方式を採用したコードリーダであるIT4400においても生じ得る事象であることは、当業者が普通に認識することができたものというべきである」、「公然実施されたIT4400に上記周知技術を組み合わせて、周辺部の光量不足を緩和するために、『読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう、絞りを配置することによって、光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し、前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子に対して入射する前記読み取り対象からの反射光が斜めになる度合いを小さくして、適切な読取りを実現』することは、当業者が容易に想到することができたというべきである」、「原告は、・・・・IT4400は、いわゆるガンタイプのコードリーダで、ある程度の大きさが許容され、周辺部の光量不足の課題が顕在化しにくいことや、ビデオカメラ装置と2次元コードリーダでは求められる機能の優先順位が異なり、発光手段の有無やコンパクト化のニーズを含めてレンズや絞りの設計思想自体、根本的に相違していることを挙げ、IT4400に対して、上記周知技術を組み合わせる動機付けを欠く旨主張する。しかし、周辺部の光量不足は、マイクロレンズ付き撮像素子を採用することに起因して生じる課題であって、ガンタイプのコードリーダであれば、マイクロレンズ付き撮像素子を採用しても、当該課題が生じないということはできないから、その解決手段として、上記周知技術を採用することについて動機付けを欠くということはできない。また、原告の主張する、装置に求められる機能の優先順位の相違が、上記周知技術の採用を阻害する事情に当たるともいえない。よって、原告の主張は採用できない」と述べている。

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