知財高裁(令和元年)“二重瞼形成用テープ事件「本件和解契約2条は乙らは、自ら又は第三者を通じて、無効審判の請求又はその他の方法により本件特許権の効力を争ってはならない。ただし、甲が特許侵害を理由として乙らに対し訴訟提起した場合に、当該訴訟における抗弁として本件特許権の無効を主張することはこの限りではないと規定する。しかるところ、2条の上記文言によれば、同条は乙ら(原告、センティリオン及びB)は(被告)に対し、被告が原告らに対し提起した本件特許権侵害を理由とする訴訟において本件特許の無効の抗弁を主張する場合(同条ただし書の場合)を除き、特許無効審判請求により本件特許権の効力(有効性)を争ってはならない旨の不争義務を負うことを定めた条項であって、原告が本件特許に対し特許無効審判を請求することは、およそ許されないことを定めた趣旨の条項であることを自然に理解できる。そして、・・・本件和解契約の交渉経緯によれば、本件和解契約2条の文案については、被告の代理人弁護士と原告、センティリオン及びBの代理人弁護士が、それぞれが修正案を提案するなどして十分な協議を重ね、最終的な合意に至ったものであり、このような交渉経緯に照らしても、同条は、その文言どおり、原告が本件特許に対し特許無効審判を請求することは、およそ許されないことを定めた趣旨の条項と解するのが妥当である。そうすると、原告による本件特許無効審判の請求は、本件和解契約2条の不争条項に反するというべきである」、原告が本件特許無効を請求することは、原告と被告間の本件和解契約2条の不争条項により許されないから、原告は、本件特許の特許無効審判を請求することができる『利害関係人(特許法123条2項)に当たるものと認めることはできない。したがって、原告の本件特許無効審判の請求は、不適法であって、補正をすることができないものと認められるから、同法135条により、却下されるべきものである。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない」と述べている。

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