東京地裁(令和元年12月4日)“アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法事件”は、「原告は、本件無線ユニットの信号伝送方法が、構成要件1Cにおける『2〜3cmの距離』との構成を充足しないとしても、この相違点は本件各発明に係る方法と均等なものということができるので、均等侵害が成立すると主張する」、「本件各発明は、埋設した測定装置と地表の測定装置を接続する信号線等のケーブルが長くなると、誘導電圧の影響によって測定結果が乱れ、また、落雷によって生じる高い誘導電圧によって埋設した測定装置の電子回路が故障するなどの課題を解決するため、測定装置近傍に2〜3cmの距離でカップリングさせたアンテナを設け、電波を介して同軸ケーブルで信号を伝送する構成を採ることにより、上記課題の解決を図るものであると認められる。そして、カップリングさせたアンテナの距離については、その距離が大きくなりすぎると十分な電界強度が確保できず、信号の伝送に支障が生じる可能性がある一方(本件明細書等の【発明の実施の形態】)、その距離が小さくなりすぎると、落雷に伴う誘導電圧から測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下することから、上記課題の解決が困難になるものと考えられる。本件各発明において、カップリングさせたアンテナ間の距離を『2〜3cm』としたのは、この距離が相反する上記の要請をいずれも満たすからであると解するのが相当である。このことは、・・・・カップリングの距離を2〜3cmとすることによる臨界的意義は認められないから、当業者が行う単なる設計事項にすぎないとした平成17年2月2日付け拒絶理由通知書・・・・に対し、原告が、同年3月16日付け意見書・・・・において、『ボアホール内で使用する歪計や傾斜計は、直径約10cm程度で、気密性が高い空域に収納しなければなりません。・・・・多数の回路を収容する必要があり、アンテナ部分の空域は小さくすることが望まれます。しかし、測定装置を小さくする目的で、アンテナ部分をあまり密結合構造にすると、本来の目的である落雷に伴う誘導電圧から、測定装置内部の電子回路を保護する能力が低下します。これらの相反する条件を参酌し、2〜3cm離すことが最も適した距離であるといたしました。』と説明していることからも明らかである。以上の事実によれば、カップリングされたアンテナ間の距離は、上記の相反する2つの要請を調和させ、本件各発明の効果を奏する上で本質的な部分というべきである」、「本件無線ユニットの信号伝送方法は、均等の第1要件・・・・を充足せず、均等侵害は成立しない」と述べている。 |