知財高裁(令和元年5月23日)“半導体装置事件”は、「甲17製品及び甲18製品に関し、甲16(サイト注:インターネット上の記事)の1頁中央の写真・・・・に示されている2つの製品のシリアルナンバー(S/N)は、写真が不鮮明であるため正確に読み取ることができないから、甲16に写真が掲載された『SSD』が甲17製品及び甲18製品であると認めることはできない。また、仮に上記写真に示されている2つの製品のシリアルナンバーが、原告の主張するとおり甲17製品及び甲18製品の番号であるとしても、これらの製品は、原告の100%子会社であるトランセンド・ヨーロッパ・・・・に出荷されたものであるところ・・・・、トランセンド・ヨーロッパは、親会社である原告が製造した製品の基板を分解して、その内部構造を分析しないと判明しない各層の配線密度等の情報について、原告に対して守秘義務を負っているものと推認されるから、これらの製品がトランセンド・ヨーロッパに到達した時点では、これらの製品により実施された発明が公然実施されたものと認めることはできない。さらに、甲17製品及び甲18製品は、いずれも2011年(平成23年)3月15日に不良品として原告に返品されているところ・・・・、一般の顧客が、店頭で購入した製品を自ら解析した後に、不良品として製造元に返品することや、販売店が、一般の顧客に対し、製品を解析する目的で当該製品を貸し出した後に、顧客から返却された解析済みの製品を不良品として製造元に返品することは、社会通念上考え難いことから、甲16の記事の筆者は、解析記事を作成して新商品を紹介するなどの目的で、トランセンド・ヨーロッパから甲17製品及び甲18製品の貸出を受けたものと推認され、他の目的で当該製品を分解等することが許されていたものとは認め難い。したがって、甲16の記事の筆者が甲17製品及び甲18製品を入手したからといって、これらの製品が本件特許の原出願日(平成23年3月16日)前に一般市場において販売されていたものと認めることはできず、これらの製品により実施された発明が公然実施されたものと認めることはできない」、「甲28製品は、2010年(平成22年)8月20日に原告からトランセンド・ヨーロッパに販売され・・・・、同年9月8日に同社から甲28の記事の筆者・・・・に広告宣伝活動用に貸し出され・・・・、同年10月26日付けで、上記筆者による同製品の解析記事がインターネット上で公開され、2011年(平成23年)4月21日に不良品として原告に返品されていること・・・・が認められる。しかしながら、前記・・・・と同様の理由により、甲28製品がトランセンド・ヨーロッパに到着したこと及び同社から甲28の記事の筆者に広告宣伝活動用に貸し出されたことをもって、同製品により実施された発明が本件特許の原出願日(平成23年3月16日)前に公然実施されたものと認めることはできない」と述べている。 |